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トランにスティアがいないことを知ったオレ達は、とりあえず冷凍保存していた素材を全て町に持っていき換金した。
一応万全を期してフルプレート姿だし、ヘルムの下の瞳の色はコンタクトモドキで色を変えてあるし、髪の色もカツラモドキで珍しくもない茶色にしてある。
「とりあえず食事にしない?」
「冒険者登録をしに行こう」
「毒消しとポーションの買い足しに行こう」
久しぶりの町中で、お金を受け取った後3人がそれぞれの方向を指差しながら別々のことを主張して黙り込む。
「……トランに来てから栄養不足でしょ?だから先に栄養補給をしようよ」
コーラルが食事に行くことの説明付けをしたので、オレも負けじと、
「プレートキーチェーンの中に道具を入れたいから、先に冒険者登録がしたい」
と、説明付けをして、最後となったドラードに注目する。
「俺の用事は最後でも問題ないから……”冒険者登録に行きたい”に同意する」
こうして2対1となったのでギルドに向かい、何度目かの冒険者登録をしようと受付に向かったのだが……。
当然と言えば当然のことで、高過ぎるステータスを怪しまれたのでその説明を求められてしまった。
どうやら冒険者登録のやり直しに対して甘かったのはこの世界の特性ではなく、オードゥスの問題だったらしい。
「オードゥスで冒険者として活動していましたが、トランには商人になるつもりで冒険者を卒業してからこちらに来たのですが上手くいかず……。稼ぐためにまた冒険者になろうと思いまして」
っと。
オレはきっと地獄に行けば舌を何度も抜かれるのだろうな。
「俺も同じ理由です」
「……トランでは、冒険者登録を破棄した方の再登録には1か月の期間を開ける決まりですが、トランに来られたばかりであることや破棄をしたのがオードゥスであることを考慮して、1か月間の監視対象にさせていただくことを条件に登録を許可しましょう。1か月間は町から出ないようお願いします」
1か月の監視対象は困ったな……ナナ側のやつらが来た時に逃げられないばかりか、オードゥスでの犯罪者だなんて伝わったら速攻で捕まるぞ?
だからってここで、やっぱり冒険者登録は良いですと言ったら怪しさしかない。
「監視対象って……常に監視されるってこと、でしょうか?」
まずい、この聞き方だとなにか可笑しなことをするよって言ってるように聞こえる。
「プレートキーチェーンでの位置確認と受けたクエストの確認、倒した魔物の種類や数を把握するだけですよ。お二人のプライベートを覗き見ることはありませんのでご安心ください」
プライバシーは守られるわけだな。
それだけならプレートキーチェーンを部屋に置きっぱなしにしてさえいれば外出も自由なんじゃないか?
「分かりましたー」
なんだ、ちょっと焦ったけどトランも結局は甘いんじゃないか。
「では、プレートキーチェーンを着けますねー」
ガチャン。
え……?




