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第2王子のセミオンは第1王子であるアフィオの実の弟だ。
兄が王太子って事で子供の頃から劣等感を抱きながら育ったらしい。
何故か1つ上の兄は自分と同じ年に魔法学校に行くと言い出し、寮生活を謳歌しようとしていた計画が台無しになった。
と、本人がオレとドラードの前で愚痴っている。
兄に直接文句を言うでもなく、家族に愚痴を言うでもなく、こうして全く関係の無い所で愚痴りたい気持ちは分かるよ。
身内に言っても無駄なんだよな?
分かるよ、物凄く、とても良く分かる。
でも、こうして元気良く愚痴れるだけの元気があって良いじゃないか。これがもっとドラードみたいに無表情になって感情を押し殺すようになったら末期だし、エイリーンみたいに感情も何も失ってしまえば手遅れだ。
うん……この一角だけ妙に暗いな!
流れを変えないと、ただの負け犬の集まりみたいになってしまう。
オレは別にどうでも良いし、関係のない事ではあるんだけど、なんとなくこのゲーム内においての「悪役」はオレだけじゃなく、ここにいる3人を指している気がしたんだ。
魔法学校を卒業した年の生贄にはエイリーンが選ばれるが、その次の年は?大魔法使いとなるドラードの扱いは、ここ数日の間に伺い知る事が出来た。
強力な魔力を持っているドラードを、魔法学校の教師ですら持て余しているのだ。強い魔力を持った生贄候補にはピッタリじゃないか?
現時点で無属性の玉を出せるセミオンも生贄候補として申し分ないんじゃないか?
まぁ、ただ1人光属性を持っているナナも生贄としては良いんだろうけど……ナナを取り巻く侯爵家の態度を見れば生贄には考えられていないんだろうなってのが丸わかりだ。
今までは、オレが守り神を倒せば今後生贄になる者がいなくなるんだ!って、ちょっとした英雄気取りだったけど、今からは違う。
ドラードとセミオンを助ける事が出来るんだ!って、明確な理由が出来た。
不特定多数の、見えない未来の生贄候補を助けるんじゃない。今ここで、こうして目の前にいるこの2人を助ける事が出来るんだ。
これは今日から特訓メニューを増やした方が良さそうだな。
「ドラード、殿下。折角天気も良い事ですし、今から3人で中庭を走り込みませんこと?」
全く令嬢らしくないお誘いだったとは自分で思ったが後の祭り、2人は愛想笑いを浮かべると、体調が……とか言って逃げて行ったのだった。




