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ドラードの記念すべき1回目の乙女ゲームは、セミオントゥルーエンドで終わった。
エイリーンは生け贄にされて死に、ドラードも魔力暴走を起こして死んだという結果だ。
「……悪い、もう1回いいか?」
どうやらドラードは結果に満足いかなかったらしいので、もう1回今度はハードモードプレイしてもらった結果、セミオン友情エンドで終わった。
当然、エイリーンは生け贄にされ、ドラードも処刑という形で死んだ。
「……」
そして無言で押されたコンティニュー。
3度目はハードモードでのセミオントゥルーエンド。
どんだけセミオンが好きなんだよ。
「……もう1回」
どうやら納得いかなかったらしいな……まぁ、意中の相手になりきってプレイする恋愛ゲームで、他の攻略対象者とくっつくところなんかは見たくないんだろう。
だったらドラードルートを選べばいいのに。
「ドラードのトゥルーエンドもあるから、自分が言われて嬉しい選択肢とか、自分が行きそうなところを選んで行動してみろよ」
「それならエイリーンは死なないか?」
あぁ、エイリーンが死なないルートが見たかったのか。
「ハーレムルートか、冒険者エンドならエイリーンは生け贄には選ばれない」
難易度はかなり高いが……。
「……1度俺のルートを試してみる」
ん。
ん?
「いや、ドラード?自分が行きそうなところだぞ?中庭じゃなくて図書室だろ?」
ドラードは魔術に特化したキャラクターで、休み時間になれば図書室に行って魔法の研究をするために魔法書を読む。
「え……いや、中庭以外に何処がある?」
むしろなぜ中庭に行くのかが分からない。
「魔法書を読んで魔法の勉強するんだから図書室だよ」
なるほど、と放課後何処に行きますか?の選択肢を図書室を選ぶと、そこには座って何冊もの本を前に広げた姿のドラードのグラフィックが表示された。
「1『隣いいですか?』、2『どのような本を読まれているのですか?』3立ち去る」
この時点ではドラードとは仲良くないから、3番が最も好感度が上がり、2番が大きく下がる。
「えっと……俺が良いと思う答え……1?」
あれ……?
「いや……最も好感度が上がるのは3」
「え?来るだけ来て黙ったまま立ち去られるのが1番嫌だけどな……」
え?
「ドラードがよくいる場所は図書室ってことだけを意識して、後は自分の思った通りにドラードを攻略しようとしてみてくれ」
分かったと返事をしたドラードだったが、オレの知っている答えではない選択肢を選び続け、そしてナナとの買い物イベントのグラフィックが表示されたところでクルッとオレの顔を見上げてきた。
「どした?」
尋ねてみるが、中々答えようとはしないドラードだったが、ふいに視線を画面に戻すと描かれているグラフィックの顔を指差した。
「この物語がなにを表しているのかは分からないが、ハッキリしていることがある」
このシーンでなにか気が付けることがあると?
「なに?」
古代道具のヒントがどこかに描かれているとか、もしかして実際に買い物イベントを経験したことがあるとか?
「この登場人物を攻略することは不可能だ」
は?
「いやいや、ドラードルートのトゥルーエンドはあるから」
言っても信じないドラードは、それ以上ストーリーを進めようともしないので、代わりにドラードルートのトゥルーエンドを見せてやることにした。
「ここの選択肢はなんだ?」
古代文字を翻訳しつつ選択肢の説明をしながら進めていくが、ドラードの答えは高確率で好感度が下がる選択をしている。
それではドラードルートからも外れてしまいそうなので、とりあえずトゥルーエンドを見せるということで好感度が最も上がる選択をして進めていけば、しっかりとしたトゥルーエンドが見れた。
「ほら!ちゃんとあるだろ」
得意げに結婚式を挙げる2人の幸せそうなグラフィックを見せてやれば、鼻で笑われた。




