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調べたい事が沢山あって、学びたい事も沢山あるのに、部屋から出られない。
無駄に時間を潰したくはないが、出来る事なら魔法学校へ通う事になるまでは親父に目を付けられたくはない。
既に目を付けられているんだけど、これ以上行動に規制がかけられては本当に身動きが取れなくなる。
どうしたものか……。
「エイリーン様おはようございます。どうされました?随分とお元気なお目覚めだったようですけど……」
カチャンと鍵の開く音がした後、オレ専属の侍女であるフィンが、先のオレの雄叫びを聞きつけてやってきた。
随分と時間が開いた気もするが、雄叫びを聞いてから部屋の鍵を親父に借りに行って戻って来たのだろうから、まぁこれくらいの時間はかかるのだろう。いや、寧ろ早い方に入る。いやいや、鍵を開けて入って来たってだけでも運が良い。
親父はこの部屋の鍵を自分で管理していて、合鍵などは作っていない。その癖鍵を持ったまま平気で出かけて行くんだ。
数日戻って来ない事もよくあり、そんな時はドアの下に開けられた小窓から食事だけが差し出された。
丁度、猫とか犬用の出入り口みたいな奴。
フィンはオレの専属だってんだから合鍵くらい渡せば良いのに。
あー、えっと、どうしたんだ?って聞かれてるんだった。
「し、心配には及ばなくてござりまするわよっ!」
いかん、令嬢っぽい話し方が迷子になった。
可笑しいな、昨日まではちゃんと令嬢として暮らしていて、その記憶もバッチリあるってのに、前世の記憶を取り戻したってだけで昨日までの事が薄っすらとした霧の向こう側にあるみたいだ。
どんな風にこの部屋の中だけで過ごしていたのか……。
あぁ、違った。部屋からは抜け出していたんだっけ。
深く帽子を被って髪色を隠し、目を閉じて瞳の色を隠し、窓からコッソリと庭に出てたんじゃないか。そこで拾ったのがあのテーブルの上にある石。
あの石はオレの宝物。
自由に行動して獲た戦利品は、この部屋から解放される魔法学校入学までの心の支えになる希望の石……って事にしよう。
まぁ、乙女ゲーム本編では一切触れられる事もないオレの幼少期なんだ、それっぽい設定を自分でつけても問題ないだろう。
それに……そう遠くはない感情をこの石に抱いていたのも確かなんだから。