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町で消費アイテムの補充を終えた後、オレとドラードは離脱して3つ先の街に移動していた。
理由はかなり簡単なことで、冒険者のランクをFからCに上げるテストを受けるためだ。
Fランクではクエストをクリアした時のボーナスは出ないんだけど、ランクを上げればその分ボーナスが発生する。
Cランクではクエスト報酬の3パーセントだから少ないんだけど、ないよりはマシだろってね。
「ランクアップクエストですね、今は他のパーティーがクエスト中ですので、しばらくお待ちください。順番が来ましたら通信機にお知らせを届けますので、それまで自由にしてくださいねー」
ギルドで申し込むとそう言われ、3と書かれた札を渡された。
どうやらランクアップクエストを受けに来ている新人冒険者が多いらしい。
まぁ、順番が来たら通信機で知らせてくれるんだからただただボンヤリと待たなくてもいいし、商品の買い付けでもしながら待つとするかな。
「エイリーン、少しいいか?」
商店が並ぶ方へ行こうとして手を引かれた。
「どした?腹減った?」
「いや……聞いておきたいことがあるんだ」
聞いておきたいこと?
「うん、なに?」
聞いておきたいことがあると言ったくせに、どうぞと返してからしばらく、ドラードはチラチラとこちらの様子を伺ってくるものの無言だった。
どこか思いつめたような表情にも見えるし、緊張しているようにも見えるんだけど、なんか朴念仁じゃないってだけで嬉しいわ。
ゲーム内のドラードは、まだ1回も笑わないんだよ。
「その……ベルノーズに、告白されてたから……返事、したのかと思って……」
あぁ……先延ばしにしてできるだけ考えないようにしていたことを……。
とはいえ、ベルノーズのためにも早めに返事をした方が良いんだよな。
「言ったと思うんだけど、オレは男なんだ。男のベルノーズは恋愛対象じゃない。ただな……人から告白された事って初めてだったし、断り方が分からないんだよ。必要以上に傷付けたくないって言うか……でもオレが消えてエイリーンが戻って来るなら、ベルノーズは良い相手だとも思う」
だから今断るんじゃなくて、エンディングの後でも良いんじゃないかなーなんて。
「どうして……」
どうしてって、そりゃ分かるだろ?
「ナナマジックにかからなかったんだから、安心してエイリーンを任せられるだろ?だからクロさんでも良いんだけど、クロさんはドーラのことが好きだしな」
「エイリーンじゃなくて、キヨタカは?キヨタカはどうしたいんだ?」
オレ?
オレの恋愛事情は、そうだな……。
このままここでエイリーンとして生きる事になるのだとしたら……。
うん、想像できない。
エンディング迎えた瞬間消える可能性がある中で、どうやって恋愛しろってんだよ。
「……?」
色々考えるのはエンディングを迎えてからだ、そう説明しようとして言葉が止まる。
ここはゲームの中だけど現実と同じように時間が流れている。そんな中で、はいここがエンディングですって区切りってあるのか?
そういえばオープニングだってここだろうなって所はあったけど、特別な効果音があった訳でもないし、タイトルコールがあった訳でもない。
実際に、今この瞬間も、どこかのストーリーではエンディングを迎えた後だってことも考えられるじゃないか。
「キヨタカ?」
「今は……恋愛よりも、冒険者としてレベルを上げたいし、商人として彼方此方行きたい」
これは、今のオレが言える本音だ。




