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全員でギルド奥にあるテーブルに着き、これまでの経緯の説明を聞いた。
1時間経ってもノータスとケリーが帰らなかったら連れて来て欲しいと伝えたのに、2時間経っても戻って来なかった理由は、ノータスとフードの人物2人の冒険者登録に時間がかかったからだという。
ケリーは既に冒険者として依頼をこなせるまでに成長しているようで、現在はCランクだそうだ。
「キヨタカ、お前も冒険者になってこい。冒険者として生きるのが嫌だってんならそれで良い。だけど、ステータスが確認できる状態でいてくれ」
カワさんがナナマジックにかかって弱体化したこと、トラウマになってる感じかな?
確かに冒険者にとって急な弱体化は恐ろしいからな……もしクエスト中に弱体化が起きれば命の保証はない。
オレは大丈夫なんだけど、うまく説明できる自信はないし、例え説明できたとしてもクロさんの憂いは晴れないだろう。
冒険者になるつもりは全くなかったんだけど、ナナ側に寝返ったスティアがいるかぎりオレ達の居場所はドラードかベルノーズのプレートキーチェーンを通じて常時バレ続けているんだから、冒険者になってもならなくても同じことだな。
最終決戦のちょっと前に冒険者登録を破棄するか、プレートキーチェーンを海に捨てるかダンジョンの奥に捨てるとかすればそれで済む。
「はぁーまた訳の分からない奴が増えた……なぁ、エイリーンはどこだよ。いい加減に会わせろ。無事なんだろうな?もしなんかあったらお前ら全員ぶっ倒すからな!」
と、冒険者なり立ての“冒険者見習い”がすごんだ所で、恐ろしくもなんともない。
ほら、クロさんなんて「生きの良いのが入って来た」みたいな顔して喜んじゃってるし。
「訳分からなくない。お前の方が、知らない人間!」
随分と言葉が上達したベルノーズがノータスに睨みを利かせていて、ノータスの隣に座っているケリーは疲れ果てた顔をしている。
そしてカワさんはそんなケリーを穏やかな表情で眺めていて、その横ではフードの人物が微動だにせず座っていると。
なるほど……延々とこんな感じの雰囲気だった訳ね。
「クロさん、カワさんは今正気なんですよね?戻る瞬間って見ましたか?後、あのフードの人は誰なんですか?」
どうやって話をまとめたら良いのかが分からず、とりあえず気になっていたことを先にクロさんに尋ねる。
「ケリーを誘って何度かクエストに行っていたら戻ったんだ。戻る瞬間は見ていないが今の兄さんは正気だよ。あのフードだが、元はケリーのストーカーで、今はベルノーズのストーカーだな」
ナナのストーカーではなくケリー?いや、ベルノーズの?
「え、どういうこと?」
ストーカーと共に行動してるのがそもそも可笑しくないか?それにストーカーっていうわりに、フードのやつは黙ったまま動かないし、大人し過ぎない?
「……聞こえてますよ。誰がストーカーですか」
あ、喋った。
声を聴く限り女性ではないから、やはり攻略対象者なんだろう。
で、その声はゼゼラでもなければセミオンでもなくて……え?聞き間違い?
いや、あのフード付ローブを見た時から、見覚えがあるって感じていたじゃないか。
「悪い悪い。古代文字研究の研究が打ち切られただろ?それで研究者達は散り散りになったんだけど、コイツは行く所がないって言って唯一古代文字を読めたケリーについて回ってたんだよ」
古代文字の研究が打ち切りになったって所から新情報過ぎるんですけども……。
「読める訳ではなくて、家に台座があったから馴染みがあるってだけって何度説明しても分かってもらえなくて困ってたんです」
未だ睨み合いを続けているベルノーズとノータスから離れ、オレの隣に移動してきたケリーは、頬を膨らませてフードの男を睨んでいる。
「仕方なかったんです。研究室がなくなって、唯一の希望だった勇者候補が全く古代文字が読めなかったんですから。形を知っているということすら貴重な情報源だったんですよ」
どうやら本当にナナは古代文字が読めなかったらしい。
だとしたら、確かに形を知っているってだけでもケリーの存在は唯一の希望だ……ベルノーズの国では、異世界語として解読済みだと知るまでは。
それで今はベルノーズのストーカーなのか。
これは、オレも読めるってことは隠しておいた方が良さそうだ。




