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コッソリとギルドの中を覗き込めば、奥にあるテーブルを陣取ってベルノーズとノータス、ケリー、クロさんとカワさんまで全員が座っていて、更にはその奥に謎の人物が1人座っていた。
謎と言ったのは、頭からフードを被っていて全く顔が見えないし、ぶかぶかのローブだから性別も不祥であるから。
ギルド内に魔力を充満させてステータスを見ようかと思っていたけど……よりによって1番奥の席。
勇者の部屋を見た時とは違って人の流れがあるから充満させにくいし、魔力に敏感な冒険者がいる中で強めの魔力を出せばバレてしまう。
「ドラード、あの1番奥にいる奴は誰か分かる?」
隠しキャラクターの可能性もあるし、ナナ側の人間がオレの様子を探るためについてきた可能性もある。
「あ……えっと……」
知っているようだな。
その上で言い出しにくい人物となれば、やはりナナ側の人間で間違いない。
プラガット侯爵領にまでやってきて、オレの家に押し入ろうとせずにベルノーズに面会を要請し続けているから、まず間違いなくアフィオとスティアではない。
アフィオなら誰がなんと言った所で家に押し入ってくるし、スティアはベルノーズに話しを通すことすらせずに“ただいま”ってテンションで普通にやってきたはずだ。
敵でありながらも、ある程度は常識がある人物……ゼゼラか?
けど、あのフード……どっかで見た気がするんだけど、どこだったかな……。
「不明な人物がいる中でエイリーンの姿はマズイか……」
エイリーンがこの村にいるという情報を王とかプラガット侯爵が耳にすれば、警備隊とか騎士とかで形成された討伐隊がやってきそうだ。
「そう思う」
将来は大魔術師になるドラードの魔力を持ってしても“そう思う”ってことは、あのフードは相当な危険人物なのだろう。
エイリーンとして出て行った方が、キヨタカとエイリーンが同一人物であるって情報を隠し続けることができるから楽なんだけどな……。
でもキヨタカとして出て行けば、ノータスとケリーに自分がエイリーンだと説明をする手間がかかるし、その時にクロさんやカワさんやあのフードが側にいると、もれなく正体がバレる。
「一旦キヨタカとして出……」
「うん!それが良いと思う!」
即答にも程がある。
まぁ、そこまで言われたらキヨタカとして出ていくしかないか。
こうして久しぶりにキヨタカの姿になってギルドに入ると、誰よりも早くにオレに気が付いたクロさんが駆け寄ってきて、ガシッと掴まれ……。
恐らくはプレートキーチェーンに魔力を流してステータス画面を見ようとしているのだろう。
「あれ?」
そしてなにも見えなかったようだ。
それもその筈、オレは今冒険者じゃない。
「クロさん久しぶり。オレ、冒険者引退したんです」
軽く今の現状を説明をすれば全員の顔がこっちを向いて、間もなく同じようにカワさんが駆け寄ってきた。
「どういうことだ?魔剣士になるって言ってたじゃないか」
おぉ、カワさんだ。
「色々ありまして……」
何処から何処まで説明すれば良いのか分からないけど、色々あったことは確かだし、細かいことを言える場所でもない。
「……俺としては、全員今すぐ冒険者にして、ステータス値を確認したいんだけどな」
クロさんはナナマジックにかからなかった貴重な人物で、ガッツリとかかってしまったカワさんを元に戻すためにケリーに会いに行った。
そこから連絡がなかったから詳しい経緯は分からないけど、今のカワさんは通常バージョンにみえるし、なによりクロさんがナナマジックの特徴である“ステータス値の初期化”を知っている。
あれ?
もしかしてクロさんって、物凄く信頼できる人物なのでは?




