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少し考えたら分かった筈だった。
ほんの少しでも頭を使えば容易に想像がついた筈だった。
ここは騎士を目指している生徒が、騎士と同じ訓練をこなす為の場所なのだから、攻略対象者の1人である騎士見習い……アストロ・ノータスが来ているのだと。
で、攻略対象者なのだから、その傍には主人公のナナがいるだろう事。
更に、そんなナナの侍女であるフィンが傍に控えている事と、スティアもいるだろう事。
光を浴びている事も手伝って、それらの人物達はキラキラと輝いているように見える。
なんか、ちょっと前まではオレの横にフィンとスティアがいたのが嘘みたいだ。
いやいや、何を気後れしてんだよ。知り合いに会ったんなら挨拶をするのが普通じゃないか。
オレは雑に縛っていた髪を解き、目を覆っていた茶色のコンタクトモドキを消してから4人の元へと歩み出た。
「皆様ごきげんよう。訓練の見学にいらしたの?」
よしよし、ちゃんと令嬢っぽく話しかけられたぞ。
しかし、待てど暮らせど返事はなく、ナナからは不思議そうに見られ、ノータスからは白い目で見られている。それだけじゃない、ギャラリーも揃ってオレに批判的な視線を向けているではないか。
「あの……エイリーンさん?少し失礼が過ぎますよ」
ナナが困ったように笑い、それを見たノータスがオレの前に立ち塞がり、ビシッと指を刺してきた。
「平民風情がナナ嬢に話しかけるな」
とか言いながら。
「……は?」
説明を求めようとフィンを見るが目を反らされ、スティアに至っては俯いてしまい、チラリとも顔を上げない。
「ノータス、良いの。彼女はこういう人なのよ」
儚げな微笑を浮かべるナナはノータスの手を借りてベンチに座り、ノータスの顔を見上げている。そして見詰め合うと爽やかな笑顔を……。
なるほど。
健康的なカップルが休憩時に笑い合っている風に描いたオレの絵は、現実に見るとあんな感じになるわけか。
ナナはノータスルートに入っているのか?
って、ナナの恋愛事情などどうでも良い。
オレは騎士の訓練に用があってここまで来たんだよ。




