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パシック王子の盛大なる誕生祭が終わったらしい。
パシック王子の騎士団に入隊できるかもしれない武道会は、それはそれは大盛り上がりだったらしく、あまりにも優秀な人材が多かったため優勝者だけじゃなく、上位数名が騎士団への入隊権を手にしたようだった。
で、その大会にあろうことか攻略対象者がこぞって参加するという珍事が起き、しっかりと上位者にそれぞれ名を刻んだそうだ。
まぁ、あれでしょ?ナナに良い所を見せようとして、ナナへアピールする為だけに参加した感じでしょ?
オードゥスの王子2人がパシックの王子の騎士に志願したと大きな話題になるなんて想像もしなかったんだろうさ。
スティアが側にいながらこんなことになってるんだ、きっと頭が良かった筈の庭師見習い少年も無事にナナマジックにかかってしまい、知能が初期値に戻ってしまったんだろう。
それでもドラードに届くスティアからのメッセージはしっかりと暗号文なのだから、この暗号はかなり初期の頃から使われていたんだろうと思う。
そして今では毎日オレの様子を訪ねてくるようになった。
エイリーンの今日の行動と様子を報告してくれ。
それがここ最近来る内容だ。
そしてドラードはオレにどう答えれば良いのかと意見を求めてくる。
「エイリーン、今日も“行動と様子”が来たけど、昨日と同じで良いか?」
スティアの質問を“行動と様子”って言うのを止めなさい……。
「昨日と同じで良いよ」
実際、昨日と同じことをしていたんだし。
1日中森の中を探索しているだけだから、特に面白い話なんかひとつもない。
そりゃただ歩き回ってるんじゃなくて冒険者のドラードとベルノーズのレベル上げと称した魔物退治をしながら、だけどさ。
後はそうだな……蛇が出てきた時は大袈裟に驚いているお陰でドラードは疑うこともなくオレの弱点がヘビであると思い込んだようだった。
それをスティアに報告すれば良いものを、ドラードはそれをせずに本当に毎日毎日同じ言葉を綴っている。
暗号を考えるのも面倒になったのか、途中からは内容だけではなく暗号すらそのままだ。
そしてそれをスティアは指摘しないどころか、暗号の使い回しはスティアから始めたというんだから知能よ何処へ行った?と言いたくなる。
しかし、毎日毎日同じ文面ってのは、話題がなくなったからこうなりましたって解釈するにも無理があるから、恐らくはストーリーだな。
セミオンの恋愛イベントを先取りした時に、全く同じセリフでイベントのやり直しがあった。その現象が今起きているのだとしたら……ドラードかベルノーズのイベントが発生してるってこと、かな?けど、ノータスがナナ達と合流していないならノータスって線もあるのか?
隠しキャラってことも……いや、それなら態々こうして毎日同じ文面でナナからではなくスティアから届くのは変じゃないか?
ならスティアのイベントか?
なんにせよ、イベントが始まってるってことは、ストーリーではエイリーンがドラードとベルノーズを連れてナナから離れるって内容があるってこと。
プレートキーチェーンでのやりとりをしているのだから、そのストーリーでドラードとスティアは冒険者で間違いないこと。
そこでのエイリーンが冒険者かどうかは分からないが、悪役令嬢らしくナナを貶めるための作戦を練るか、行動を起こし、ドラードによってスティアにリークされると。
まぁこんな感じだろう。




