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準備があるといった手前そのまま降りる訳にもいかず、町から少し離れた所にある草原に降り立って無駄に剣の素振りをやって「日課ですのよ」と言う感じを装ってみたけど、これは確かに日課だし、広い場所でやる必要だってあるから、オレは別に疚しいことなど何もしてないと言えるな!
うん、堂々としておこう。
「タロウのステータスが高いのは、日頃の成果なんだな」
くっ!
お前もいちいち眩しいな!流石は攻略対象者……。
「……ベルノーズは冒険者になったのか?」
「うん。レベル1の冒険者だけど、素早さは高いと思う」
確かにオレの飛ぶスピードについてくるんだから、レベル1では考えられない位に素早い。それを自分でも分かってるって事は、素早さに特化したスキルでも持ってるとか?
子供の頃からの得意技!みたいな……。
まぁ、なんだっていいさ。
「昨日も言ったと思うけど、オレは他人と慣れ合うのは好きじゃないんだ。だから仲間とかそういうのは他を当たってほしい」
なんなら王都に行ってカワさんとかクロさんを頼っ……たら駄目なのか。
ベルノーズは攻略対象者なんだから、冒険者との知り合いが増えれば増えただけナナとの接点ができやすくなって、最悪ナナが冒険者になるストーリーの流れになる可能性が高くなる。
スティアとドラードが冒険者って時点で手遅れな感じではあるけどさ。
「うん。嫌」
否定するなら何故”うん”って返事をしたんだよ!
「嫌じゃなくて……」
「タロウについてくって決めたんだ。だから冒険者になった」
何を勝手に決めてんの?
こっちの都合ってものを少しは考慮してほしいんだけど?それに昨日もちゃんと”ついてくるな”って言ったじゃないか!
なんなんだよこのごり押し……あ、そうかそうか、分かったぞ。
この流れは明らかに不自然。って事は、ベルノーズが王都に行くためのイベントが発生した訳だな?ここで連れて行かなければスティアやドラードと同じように後々ややこしい事になりそうだし、ここは大人しく王都に連れて行って、サクッとナナマジックにかかってもらうとするか。
そうすれば少なくともオレについてこないだろうし。
「1番大きなギルドに連れてってやる。そこで自分に合ったパーティーメンバーを探すと良い」
と、王都に行く理由付けはこんな感じで良いかな。
「探さないから行かない」
えぇ~……。
「初心者が出来る依頼の数も多いし、オレも王都に行くんだが?」
「なら行く!」
ニパッと笑顔のベルノーズは、物凄く得意げにプレートキーチェーンを背負っていたカバンにキーホルダー感覚でつけ、クルッと1回転して見せてきた。
これは、なんだろうな。小学校1年生になるからって新しいランドセルを背負った子供みたいな感じだ。
「ハンカチとティッシュは持ったか?」
なーんてな。
「ハンカチはないけど、手ぬぐいなら持った!ティッシュのかわりに……草持ってく!」
草!?




