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何はともあれ、攻撃魔法を考えなければならない。
オレよりも随分先に攻撃魔法に対して意欲的だったスティアは、殺傷能力は然程高くは無さそうな砂嵐的な魔法を編み出していた。
もっと風を強く吹かせ、もっと大きくて尖った砂の粒を目標に浴びせれば擦り傷くらいは与えられるだろう。
もっともっとレベルを上げれば目標を摩り下ろす事だって可能に……少々グロイな。
砂の粒ではなく氷の粒に変えれば、水と風の魔力でも似たような技が出来るか。けど、風に乗せている氷の粒が溶ければ単なる水に戻ってしまう訳で、そうなればかなり激しい雨に打たれているのと大差ない事になって攻撃とは呼べない。
風を出来るだけ冷気にするか、多少溶けても良いように氷の粒を大きくするか……。
もしくは全く違う技を考えるか。
目標に水を浴びせかけて一気に氷付け!って手もあるな。これなら目標が人ではなくても攻撃だと判断される可能性が高い。
まぁ、自分の考えだけじゃ間違っていた時が痛いから、家庭教師の意見を聞いてみよう。
「先生。私も攻撃魔法を考えましたわ。見て頂けるかしら?」
スッと立ち上がり、家庭教師の返事も聞かないうちに片手を花瓶に向けた。
花瓶の中にはスティアの父親が丹精込めて育てたのだろう花が咲き誇っている。それを今から氷付けにしてしまうのは忍びなく思うものの、それと同時にドレスを意図的に汚した使用人の顔まで思い出させるから、まぁ、絶好の攻撃対象になる。
「花瓶に当てるのですか?」
流石庭師の息子、花が攻撃対象になる事に黙ってはいなれなかったようだ。
「私のドレスを汚した使用人を呼んで頂けるのなら、その使用人を的にしますわ」
もちろん冗談だ。
もし本当に呼んで来られたら、攻撃魔法ではない大雨を使用人にお見舞いしてあげよう。
「それは……ですが、あの……割れた花瓶で怪我をされるかも知れないのに……」
流石は心優しき少年スティア、花瓶を攻撃しようとするオレの身まで案じ……待て待て、なにもオレが怪我をするからと言った訳じゃないだろ。
家庭教師が怪我をする可能性を考えたのだろう。
オーケーオーケー。
分かった分かった。
この部屋の中で唯一どうでも良い存在であるオレが的になれば良いんだろ?
まさか、スティア少年の中でのオレが花瓶よりも無価値な存在だったとは驚きだが、他の使用人の態度を見ればそれは明らかであるし、一応オレをお嬢様と呼んだスティアはそれでも十分良心的だ。




