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どんな風の吹き回しだろうかと思ったが、そう言えばスティアもオレと一緒に魔法学校に行く事になっていたのだと思い出した。
今から来る家庭教師に、一緒に勉強を見てもらうのだろう。
「あ、あの……失礼しますっ!」
イスに座っているオレの前でしゃがみ込んだスティアは、ドレスの汚れ部分に手をかざして魔力を送り始めた。すると茶色の汚れから土の粒が剥がれるように宙を舞い、そのまま窓の外へ。
スティアは地の属性を持っているようだ。
しかし、土の粒がなくなった事で汚れは薄くなったが、それでもドレスに汚れが付いている事には変わりない。
すると今度はコップに入った水をドレスの内側からかけて濡らし、布巾で水を吸い取るように押し付けている。
令嬢のドレスの中に腕を入れるとは、なんという勇気の持ち主だろう。それともシミ抜きに必死になっているだけか……。
「なんか、凄いわ」
なんだかんだで結構な時間をここで過ごしているが、なんとなく実感がなかったんだよ。
今のオレはエイリーンだってのは頭ではちゃんと理解できてるんだけど、なんかどっかでは姉のゲームをプレイしてる感覚で、これまたなんとなくエンディングの後はヒキニートな俺に戻れるんじゃないかな?なんてさ……。
まぁ、要するにフィンの事も、執事や使用人の事も、もちろん必死にシミ抜きをしてくれているスティアの事も、ゲームの登場人物だって思ってた。
だってさ、オレが描いたんだよ。
フィンや執事や使用人はモブで、顔もなにも描いてないし設定集にも載ってなかったからまだ登場人物感は薄いけど、スティアは完全にオレが描いたオレのキャラクターで……意識して描いた特徴がこのままなんだ。
それがさ……こうして動いてるんだから、凄いなって。
妙にシミジミと思ったんだよ。
生きてるんだなって。
「おっ!?お嬢様、申し訳ありません!俺、なんて事を……」
お、ようやく令嬢のドレスの中に腕を突っ込んでいた事に気が付いたのか。
そんな申し訳無さそうな顔をしなくても良いじゃないか。
ドレスを綺麗にしてくれたんだから、もっと誇ってくれたって良いのに。




