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長い長い待機の時間がようやく終わり、まとまった額の報酬を手に入れたオレはドラードとスティアを連れて武器屋に来ていた。
後から防具屋にも行くつもりで、もちろんCランクになったばかりの2人に心ばかりのプレゼントをするためだ。
ドラードは魔法職だからローブ系統だけど、スティアはガッツリとした重装備。自分の魔力で防具を出しても良いんだろうけど、ファイターになると魔力系のステータスの伸びは悪くなるから、将来的に防具を自分で出すってのは実用的ではなくなる。だったらちゃんとした防具の重さに慣れておかないとな。
ヘルムとガントレット、ブーツとアーマー上下。これだけで何キロになるんだ?そこに加えて剣と盾。
ん~……スティアは無属性の魔力を出せるほど魔力が強いから、盾職専門って結構もったいないんだよなぁ。もしかしたら盾職のナイトじゃなくて攻守いけるウォーリアの方が良いんじゃないか?
今はまだ1次転職前のファイターだから、ナイトにもウォーリアにもなれる段階。ウォーリアからウォーロードになった後の覚醒はデストロイヤー……盾職にも戦闘員にもなれる屈強な体力の化け物になれる。
うん、どっちにしろ魔力関係ないな。
「おぉ、キヨタカじゃねーか」
突然名前を呼ばれて顔を上げれば、武器屋の外に何やら赤色の汁が滴っている大きな袋を抱えたカワさんが立っていた。
昼間に見ると結構インパクトのある光景だな……まぁこの店自体が裏通りに面しているから、表通りを歩いている昼の部の人間にとっては目の届かない世界なんだろうけど。
「こんにちは。難易度いくつです?」
袋の中身を勝手に討伐依頼の証拠品だと決めつけた言い方をしながら一旦武器屋を出てみると、チラリと袋の口を開けて見せてくれたカワさん。中には明らかにしっぽが入っていた。
「難易度4の狼退治。お前は5やったらしいな、凄ぇじゃねーか!」
噂が広がるのは早いんだなぁ……それとも誰かがギルドの掲示板を使って知らせたのかな?だとしたらクロさんも知ってるのだろうか?
「ありがとうございます。これでランクBまで後少しです!」
ランクBになったらお金を貯めまくって、この国以外の場所で家を買おうと思うんだよ。
ズット前から考えてた事じゃなくて、ついさっき思いついたんだけど、守り神に勝とうが負けようがオレもスティアもこの国にはいられなくなる。だったら他の国の郊外?田舎?に家を買って、そこを本拠地にすれば便利だなーって。
守り神の討伐後ならオレだってこの世界に抗える力があるって証明になるから、ちゃんと暮らせる土台を作っても良いと思ってさ。
まぁ、当分先の話しになるんだけど……良い物件があったらキープしとこうかな?
「ランク、9月中には上がりそうか?」
9月中って事は後2週間位だから、1匹1匹が今日みたいに時間を取られたとしても余裕。
「やろうと思えば明後日にでも」
いや、難易度3の討伐依頼なんだから、簡単な依頼をポンポン受ければ今日中にだっていけそうだな。依頼があれば、だけど。
「っしゃ、じゃあBになったらすぐに連絡くれ」
満面の笑顔で手を振ったカワさんは、颯爽とギルドの方へと歩いて行ってしまった。
そりゃ、Bランクに上がったら連絡しようとは思ってたんだけどさ……9月中って縛りは何なんだ?早く上がれって事なんだろうけど、それにしては最後の笑顔。
なんか怪しいな。




