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待ち合わせ時間を少しばかり過ぎてから、ストンと学校の正門前に降り立ったオレは、上空で遊び過ぎたことを謝る前に状況が把握できずに固まってしまった。
何故前の前にドーラの姿をしたドラードがいるのか、更にその隣にセミオンがいる事、そしてオレの横には……
「お久しぶりです」
何故かケリー。
えっと……何故セミオンとケリー?で、ドーラの姿?
「久しぶり……えっと、ドーラ?」
違和感のないようこの状況を説明しておくれ。
「弟と、弟の学友です。昨日……今朝?弟には迷惑をかけたので食事でもと誘いました」
あ、セミオンの弟設定は採用されてるのね。
「誰が弟だよ」
物凄く小声で文句は聞こえてきたものの、セミオンはオレに対して直接文句は言ってこないようだ。それから察すると、正体はバレてなさそうだ。
だったらオレも完全にドーラの弟としてセミオンを見ようじゃないか!
「そう言えばケリーは魔法学校に通うって言ってたもんな。どう?授業にはついていけてるか?」
隣にいるケリーから少しばかり距離を開けてから訪ねてみれば、離れた分だけ近付かれ、
「はい!同じクラスにすっごく魔力の高い人がいて、その人から色々教えてもらっています」
と、恐らくはドラードの事を言った。
それから察すると、ドラードの正体もケリーにはバレていないようだ。
「ではお嬢様方、そして弟クン、食事に行きましょうか」
こうして、本当は飛んで店まで行こうとしていた所を急いで馬車を用意し、大袈裟な移動となった。
馬車の中、オレの隣にはドラードではなくセミオンが座り、かなり機嫌悪そうに見てくる。
彼女の弟からこんな感じで睨まれた時、どう対処するのが正解なのだろう……。
「お前、キヨタカって名前らしいな」
おっと、予想に反して話しかけてきた。しかも名前を知ってもなおエイリーンとはバレてない?まぁ、バレてないならいちいちバラすことでもないけど。
「そうそう。弟クンの名前は?」
この返しで良いのだろうか……いや、王族とは知らずにドーラの弟だと思ってるただの冒険者の反応としては間違ってない筈だ。
「セミオン、ってんだけど」
いくら冒険者でも王子の名前くらいは知ってるよな、だったら、
「王子と同じ名前?」
ドーラの弟だと思ってるんだから、ここでワンクッション挟んでみた。
「……そうだけど……お前も、キヨタカって奴と同じ名前だし」
あ、そういう感じ?
オレの事はエイリーンではなく、ドーラの彼氏と自称する別のキヨタカだと思ってる訳だな?
いや、こんな完全に気付かれないって可笑しいだろ!
「ドーラ、体調はどう?今日は無理せず食事が終わったら帰れよ?」
「え……キヨタカは依頼に行くのか?その恰好で?」
あ、物凄く反応は薄かったけど、一応服装がいつもとは違うって気付いてくれてたんだな。
「流石に着替える。今日はデートだから着飾ってみただけだし」
「デッ!?」
そんな声に詰まるほどビックリしなくても……しかもセミオンとケリーまで。




