23
今日は夏季休暇終了日という事もあり、最後までドラードとスティアも一緒いると言ってきかず、夕方が近くなるまで5人でポツリポツリと通り過ぎていく馬車を見守った。
見張りの仕事は魔法学校の門限までだから、後3時間もすれば終わる。
その時に部外者が一緒にいるとややこしくなるとクロさんとカワさんに説明を受けたドラードは、スティアを連れて王都へと戻って行く。
何度も振り返ってきて手を振ってくるスティアを、果たして弟と紹介すれば良いのか、兄と紹介すれば良いのか……。
「しかし、お前の兄貴はなんで冒険者になろうと思ったんだ?」
あ、もう自分で兄だと自己紹介してたのね。
「魔力は高そうだけど……生命力が低い。討伐依頼は受けない方が良いってもっと強く言った方が良かったかな」
え?
「生命力が弱い?それって、HPが低いって事ですか?」
スティアって体弱かったっけ!?
「お前、知らなかったのか?ステータス見てみるのが1番早いから、今から追いかけて見てこい」
見るのが1番ってどういう……いや、見に行くしかない!
クロさんとカワさんに頷いてみせ、オレは飛んで王都に帰っていくスティアの前に着地して手を掴み、プレートキーチェーンを見せろと声に出すより先に魔力を流した。
「ステータス、オープン」
次からはオレもドラードの事は言えないな。
目の前にあるのは驚いているスティアの顔と、なんだか妙に物々しいステータス画面。
なんだ、これ……。
神経衰弱に毒状態、精神疲労?HPゲージは3分の1まで減っていて、時々少しだけ減る。
とりあえず毒状態をどうにかさせようと毒消しをスティアの口の中に突っ込んでみたが、ステータスから毒の文字が消える事はなかった。
「さっきクロさんにも同じ薬を飲まされました……なんですか?この苦いのは」
クロさんも使ったって事は、2度にわたる毒消しの効果を無力化した訳だ。
呪いではないから教会に行ってもしょうがないし……ナナの回復魔法で治せるかも?
ヒロインに関わるのは嫌だが、そんな事を言ってる場合じゃない!
「ナナは侯爵邸か?学校か?」
良く考えれば、今日1日見張りをしていたこの2人が正確にナナの居場所を知っている訳ないんだけど、駄目だ、なんか混乱してる。
「え?まだ王都に戻ってきてませんよ?」
は?
いやいや、だってアフィオがナナは既に戻ってきていたって言ってたぞ?で、完璧な王子様動作で立ち去っていったんだ。
「キヨタカ、本当だ。ナナ嬢はまだ王都にいない」
えぇ……。
あれ?じゃあアフィオの想い人って、もしかしてナナではない可能性?
決まっている婚約者ってのが実はナナの事?
いや、でもアフィオは侯爵家の屋敷で想い人に会ったんだよな?それで一目惚れしたって聞いたし。
確か風魔法を使う……。
「あっ!」
侯爵家にいて風魔法を使って、セミオンと同い年の子!目の前にいるじゃん!
「お嬢様?どうされたのですか?」
そりゃ中性的に描かされるわけだよ!




