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なんだか物凄い物を見せられた。
攻撃性があったのかどうかは分からないが、水魔法で竜が出せるなんてどんな原理なんだ?
「俺は手から湯は出せないが、攻撃させることができる」
攻撃させる?それってさっきの竜で攻撃しようと思えばできたってこと……だよな?
なんか、得意げになってお湯を出す授業とかしてた数時間前の自分が一気に恥ずかしい。
オレなんかより、冒険者はもっと、ずっと強いんだな……あたりまえの事なんだけど、ほら、転生者って結構デフォルトでモブよりも強いってイメージだったからさ……。
「オレはもっと……もっと強くなりたい!」
この世界で冒険者として生きるのか、元の世界に戻れるのか、この際どちらでも良い。デッドエンドさえ回避できるのならなんだって!
「ハハッ、その威勢がありゃ十分だ。お前はレベルが高くなっても所詮は”冒険者”だ。覚醒するまでは誰よりも弱いのが当然ってもう1回頭に叩き込んどけ」
あぁ、確かにそうだわ。
レベルが高くなって、周りにいるのは自分よりも弱い攻略対象者かチンパンゴブリンだったから知らず知らずのうちに勘違いをしてしまったんだな。自分は強いって。
怖いなぁ……無自覚で天狗になってたんじゃないか。
オレは同じレベルの魔法職よりも体力はあるけど魔法攻撃では歯が立たず、攻撃職よりも魔力はあるけど物理攻撃力では歯が立たない。そんな中途半端な職業だったんじゃないか。
根本的な事を思い出せ、オレはそんな覚醒するまでは弱い職業を極めなければならないって事を。覚醒するまでは誰よりも弱いんだって事を。
怖気づいてたまるか!
腐ってたまるかよ!
やってやる、魔剣士になってやるんだ!
「カワさん、オレって魔法学校からの報酬もらえませんよね?」
10日間を指定された場所で過ごして街道を見張ること。これが依頼内容だ。そのために仮設トイレまで設けられているんだから一旦ギルドへ戻って休憩。なんて事も許されていない。
そんな中、王太子直々の依頼があったとはいえ2日持ち場を離れた挙句一旦魔法学校の寮に戻って、スッキリとお風呂に入り着替えてきたオレは、何をどう考えたって非承認だろう。
だったら残った2日をここで過ごす必要なんかないんじゃないかと思ってさ。
「ん?クロのやつが小細工してたし、もらえるんじゃないか?」
うん?
「クロさんが、小細工を?」
え?どんな事をしてたんだ?
「今もしてると思うぞ?ここ、範囲外だからな」
あ、確かにそうだ……。
もしかしてオレのせいでカワさんも報酬貰えないって事になるかも知れないんじゃあ……。
「早く戻りましょう!」
まずい、マズイ。
オレって奴はどれだけの迷惑者なんだよっ!
急いで持ち場に戻ってみると、1人トイレと書かれた札を持ったクロさんが、毛布にくるまって寝ている誰かと一緒にいた。
誰だろう。
「ただいま……そちらの方は?」
振り返ったクロさんは、寝ている人物の紹介を簡単にしてくれた。
「これはキヨタカだ」
キヨタカ……えっ!?




