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練習試合する事にして、一旦寮の自室に戻って体操着に着替えて中庭に戻ると、何故かギャラリーが2人程増えていた。
セミオンとアフィオだ。
何故ここに攻略対象者が全員集合してんだよ!
「平民は野蛮な事を思いつくものだな」
冷たい表情で睨むように見てくるアフィオは、それでもしっかりと見学するらしくスティアの横に並んで腕を組んでいる。
無言のセミオンはドラードの横で、ノータスはグルグルと肩を回しながらオレの前。
さてと、どんな手合わせルールにしようかな……。
「魔力と剣術、両方使用します?それともどちらかにしますか?」
「あー……魔法で出した短剣のみ使用可能の剣術試合?」
ふむ。
「私の属性は霧ですので、剣は手に持つのではなく飛剣になりますがよろしいですか?」
「あ、そっか……じゃあ騎士の訓練時に使用している木刀と……あ、飛ぶのは禁止だ!魔法は防御時にのみ使用可能って事でどうだ?」
自分の魔力が防御にも適していると感じているんだな?良い事だ。
「ではそれで。どちらかが降参するまでと致しましょう」
こうしてドラードの作り出す幻想的な空間の中、1ミリたりとも甘い雰囲気のないイベントが始まった。
カンッと木刀が交わる音もなく、荒れる息遣いが響くわけでもなく、ただ慌ただしい足音だけが静かに響いていく。そして時々ガンッと大きく空を切った木刀が地面に当たる音。
ノータスには剣術の才能が確かにあるし、これから訓練を積めばかなり強くなれるだろう。だけど、今はまだそこまでの強さではない。
いや、魔法学校に通う学生の中では強いと言って良いのだろうが……冒険者から見ればチンパンゴブリンよりも強いな。位なものだ。
待てよ?単なる学生が魔物よりも強いのは、これは結構異常なんじゃないか?
「お前も打って来い!」
そうだな、攻撃が来た時の捌き方も見てみたい。
まずは走って近付き、王道中の王道、振り上げてからの頭狙い。
カンッ。
軽い音が響いた。
避けるでも流すでもなく受けるのか……これ、大げさに振り上げてんだから胴体に向かって攻撃してくれば良かったのに。
じゃあ次は受けられた木刀を引いてからの胴狙い。
どうしても起動を縦から横に変更しなきゃならないから威力もスピードも落ちてしまう流れになる。さぁ、どう出る?
カンッ。
これも受けるのか?
なら、受けられた木刀を引きながらクルッと回って逆側の胴狙い。
これは一瞬完全に背を向ける事になるから反撃するにしても、逃げるにしても好機だぞ?
カンッ。
受けるの!?
じゃあこれはどうだ?
と、木刀を持つ手に向かって攻撃を仕掛けてみれば、それは綺麗に避けた。
なるほど、ノータスもオレの力を見ているんだな。




