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1日の終わりは優雅なシャワータイムで幕が下りる。のなら、実に平和的で令嬢らしいだろう。
実際には、温まった後の方が効果的であると師匠……いや、侍女が言うので寝る前にたっぷりと時間をかけて柔軟体操をしているのである。
ここでガッツリとした筋トレをしてしまうと眠りの妨げになるらしいので、お風呂上りは柔軟だけなのだが、それが結構ハードで……それ以上は無理!という所から更に負荷をかけられる拷問なのだ。
「裂けるっ!股裂けるっ!」
などと言ってしまった日には、
「お嬢様!なんですかそのはしたない言葉は!」
とのお叱りを受ける羽目になる。
世の令嬢達は、痛みによってついつい口から漏れ出る言葉ですらお嬢様語なのだろうか?
痛いでござるわよっ?
非常に苦痛に思いますってことよ?
どちらにしたって随分と余裕だな。
ならこれでどうだろうか?
「いでででででででで!」
実に分かりやすく、苦痛である事が瞬時に伝えられる良い響きではないか。
「我慢してくださいませ!」
ホワッツ!?
こうしてオレの柔軟を手伝ったフィンは、そこから湯浴みをして、柔軟をしてから眠る。
1つの部屋に閉じ込められているオレとフィン。トイレや風呂が部屋の中に備え付けられているとはいっても蛇口がない上に、湯浴み用の水を運んできてくれる使用人もいない。
使用人達はオレと一緒に閉じ込められているフィンの事を哀れには思っているが、水を入れた重たい樽を1階から3階まで運ぶほどではないらしい。
なので当然フィンもオレが出した水で湯浴みをしている。
方法は至ってシンプル、オレがシャワーを浴びた時に少し熱めの湯を湯船に張っておくだけ。
女性の入浴中に乱入するなんて事は、例えお湯を提供する為だとはいえやってはいけない事だ!
覗きたい等、1度だって考えた事もない。
1日の鍛錬を終えた後のシャワーと、ハード過ぎる柔軟を終えてベッドに横になると、もう体がベッドに縫い付けられでもしたように動かなくて、実に心地の良い睡魔に襲われるのがその理由なのだから、まぁ、不純ではあるな。




