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恥ずかしそうに顔を伏せながら、アフィオは昔話をしている。
幼い頃に侯爵家に行ったことがある事。
そこで風魔法を使う子に一目惚れをした事。
弟と同じ年だったから魔法学校の入学をずらした事。
魔法学校で再会できた事。
まさか、セミオンが落ち込む原因だった”アフィオの魔法学校に通うタイミングのズレ”が、一目惚れをした相手に会うためだったとは……。
乙女ゲームの登場人物らしい恋愛脳だな。
で、その相手がナナだってんだから、もう運命じゃないか。
少し、突っ込んだ質問をしてみよう。
「でー……侯爵令嬢とは友達位にはなれたんですか?」
オレが見る限りでは友達……いや、順番待ちをしながらナナと交流を深めているあの様子は、友達と言って良いのかどうか怪しいな。
「……昨日も言ったと思うが、俺はその者から嫌われている」
昨日も?
確かに嫌われてるって話しは聞いたけど、それドラードの事を指してたんじゃなかったのか!
確か風魔法で空を飛ぶって話しをしている時に、今年の1年には魔力に優れている生徒がいるんじゃないかーって聞いたんだっけ?
今年の1年で魔力に優れているのなんて断トツでドラードなんだけど、アフィオにとっては一目惚れをした相手の事だったらしい。
にしたって可笑しい。
ナナは属性は確かに光だけど2組だし魔力も大して強くないぞ?
それに、ナナがアフィオを嫌っているようには見えない。
「嫌ってるんじゃなくて、遠慮してるだけなんじゃないですかね?」
まぁ、遠慮しているようにも見えないのだが……。
そもそもアフィオを堂々と嫌える登場人物っているのか?
ははーん?
これはあれだな?
被害妄想ってヤツだな?
この世界から本格的に嫌われているオレの前で良くもまぁぬけぬけと。
「凄い目で睨まれる。話しかけても無視をされるしな」
おぉっと!
どうやら被害妄想ではないらしい……って、ナナはオレの知らない所でそんな事を!?通りで朝の騎士の訓練にアフィオだけが来ない訳だよ!
「根気よく話しかけるしかないんじゃないですかね……」
率先して笑顔を向けるとかでも良さそうだ。
「……嫌われて良いんだ。俺の婚約者は、決まっているのだから」
えっ!?初耳なんですけど!
「そうなんですか……」
王太子なんだからてっきり光属性のナナと結ばれるんだと思ってたんだけどな……それに乙女ゲームのメインカップルなんだろうし。
「こうして侯爵家の馬車を待っているのは、ただの悪足掻きだ……」
そんな泣きそうな顔しないで貰いたいんだけど?
だって、無性に応援したくなるじゃないか!
将来の国民のためには、アフィオをナナマジックにかけてポンコツにしてしまう訳にはいかないんだけど、当の本人がこんな辛そうにしてたらさ、もう、何がどう正解なのか分からない。




