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悪役令嬢でござりまするってよっ!  作者: SIN
第10章ですますわっ!

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 今、オレの目の前には人の頭部ほどもあろうかというサイズの、非常に毒々しい色をしたキノコがある。

 この如何にもヌルッとしてますよーというテカリ具合は、採取する気を削いでくる……だけど引っこ抜かない事には持ち帰れない。

 いつまでもランクアップテストに時間をかけている場合でもないし、ここはさっさと採取するのが大正解。なんだけど……。

 これ、本当にマンドラゴラみたいに声を聴いたらアウトとかじゃないよな?まぁ、オレが死ぬのはストーリ上守り神の踏みつぶし攻撃なんだから、それまでは命に別状はないのかもしれない。だけど、戦闘不能になればランクアップテストには落ちるのだろう。

 だったら、叫び声をあげるかも知れないと思って対処しつつ抜けばいいんじゃないか。

 キノコから少し離れ、自分の周りを水の壁で覆い、その内側に氷の壁を出してとりあえず“毒を出すかも知れない”に備え、その防御壁の中で暴風並みの風を起こして“声を出すかも知れない”に備えてみた。

 「……」

 これでどうやってキノコを抜こうというのか……。

 守りを考え過ぎてしまったようだ。

 溜息を飲み込んで防御壁を消した後、だったらキノコの周りを覆えば良いのではないか?との考えに至り、更には、声を出すにしても毒を出すにしてもキノコが生きているからだと思いついた。

 まぁ、普通ならこっちの思考が先なのかも知れないが……なんにせよ、生きていない状況かつ、直接手で触れなければ良いのだ!と。

 それなら簡単だ。

 キノコを氷漬けにした後、キノコが生えている周囲の木を切り出して運べばいい。

 こうして手に入れた氷漬けにした人の頭部程の大きさの毒々しいキノコが生えた木片にロープを繋いで、引きずりながら森を出口に向かって歩き出した。

 森の奥まで来たのだから、脱出には苦労をするのかも知れないが、オレはちゃんと一定間隔ごとに氷柱を建てながらここまで歩いてきたので、帰りはその氷柱を回収しながら辿ればいい。

 「おっ、帰ってきた帰ってきた」

 「キヨタカーこっちだー」

 森の出口が見えてきた所で、出口の向こうに見えていた2人分の人影がオレに大きく手を振りながら大きな声を上げた。

 まさか迎えに来てくれるとは思ってもみなかったよ。

 やっぱりナナとは無関係な冒険者はオレにも親切にしてくれるし、クロさんとカワさんの2人といるとイベントに参加しているような嫌な感じがなくて良い。

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