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森の奥にあるキノコを採って来る事。
そう書かれたメモと、キノコの絵が描かれた紙を眺めながら少しばかり懐かしい事を思い出す。
このキノコの絵が、前世の俺が小学生の頃に描いたラクガキに似ているせいだ。
見るからに毒キノコっぽいルックスのそれのモデルは、至ってシンプルなシイタケだったんだよ。だけど手持ちの油性ペンが黒と青と赤しかなくてさ……で、何故オレの落書きがこうして登場してるんだ?
いわれてみればさっきから倒しているベアー系の魔物も、小学校の頃に描いたラクガキに似ている気がしなくもない。
まさか姉はオレが死んだ後、あらゆる絵を使ってこのゲームを仕上げたのか?描いた覚えのない魔物がいるのは絵が足りなかったから?
だとしたら、描いた絵の中で魔物っぽいモノは全て実装されている可能性が高いな。
乙女ゲームのイベント絵を全て見る事は叶わなかったけど、魔物ならコンプリート出来るんじゃないか?更には、姉が描くあの一見生物なのかも怪しい絵もレア魔物として実装されていたら面白いな!
現に黒いモヤなんてのは実に姉のデザインっぽい姿じゃないか。
まぁ、そんなレア魔物を探すのは守り神を倒した後の話しだ。
今はただこの毒々しい色をしたシイタケを探さなければならない。
「……」
これは本当にキノコだろうな?
キノコの姿をした魔物って事もありえるのか?だとしたら、枯木ばかり見てても見つからないよな……。
いやいや、もし魔物だったら“採って来る”ではなく“退治する”と書かれている筈だ。
待てよ?もしかしたらマンドラゴラみたいに引っこ抜く時に叫び声をあげるタイプの……だったら注意書きがされている筈だな。
もしかすると書き忘れって可能性もある?
この世界の事だ、オレの時だけに何か不具合が生じて書き忘れやら伝え忘れがあったとしても不思議ではないし、警戒はするべきだな。
本来なら2、3人のパーティーで行われるテスト。2、3人いなければならないテスト。1人では何かと難しい内容となっているのか、それとも単純に安全面を考慮しての事なのか、もしくは1人ずつテストを行っていると間に合わない程ランクアップ希望者がいるのか……最後のは違うのだろうけど。
なんにしたって、不正が行われないかを監視する管理者は何処かにいるのだろう。こうして枯木を調べているオレの事も、何処かで見ている筈だ。
念のため、氷と風以外の魔法は使わないで対処しないとな。




