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スティアが淹れた紅茶をグイッと飲み干し、黙ったまま窓際まで歩いた。
呼びかける者も、呼び止める者もいない中で振り返れば、2人それぞれ感情のこもった目でオレを見ていた。
こうして見てるとキャラクター化してるなんて思えないんだから、良く出来てるよ。
「お茶、ご馳走さん。なんかの特訓中?に悪かったな。じゃあ」
本当に何でそんな自然なんだ?
オレに白い目を向けてくる者なんて吐いて捨てるほどいるんだよ。だけど本当にさ、白々しいと言うのか、あぁイベントだな?って丸分かりだったからイラッとする事はあったけど、それだけ。
こんな落ち込むなんて事、今までなかったんだけどな……。
色々抗った気でいたのに、ナナマジックから開放したと思っていたのに、実はそれも全部イベントの中の1コマだったんだなーって思ったら、オレがエイリーンとして成す事全てが無駄で、意味のない事だったって思い知らされたんだ。
なんかもう……色々ひっくるめて全てが恥ずかしいよ!
「キヨタカ、待ってくれ……」
だったら、キヨタカで成した事はどうなんだろう?
冒険者としてのオレも、意味のないモノだったのか?
まぁ……キヨタカがやった事なんてのは王都中の換気依頼位しかないけど……待て、この世界が姉の作り出した乙女ゲームなのなら、キヨタカは……ミズキキヨタカはこの世界のグラフィックを描いた本人だ。そしてキヨタカとドーラはその世界には存在しないキャラクターに違いないから……もしかするとイベントとも無関係でいられるんじゃないか?
そうなると、クルスもか。
いやいや、いい加減に学習しろよ。
この世界に救いは無い!期待するだけ無駄!
守り神の踏み潰し攻撃により死ぬエイリーンのオレがイベントから逃れる術は1つだけ、守り神の討伐を成功させる事。そこまでやって初めてオレはこの世界に抗う力を手に入れられるんだ。だからそれまでは何も信じないし、何も信じちゃ駄目なんだ。
「キヨタカさん、貴方さっきからなんなんですか!?自分だけ言いたい事言って、どうしてドーラさんの話しを聞こうとしないんですか!」
ビックリシタ……。
いや、心底ビックリしたぁ……。
「あ、うん……ゴメン……」
スティアって怒鳴れたんだな……。




