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パッチリ。
窓から差し込む光に目を開ける。
「……」
随分と洒落にならない夢を見たオレはベッドから出ると、そのまま歩いて鏡の前に立ち、そこに映る自分の姿にガックリと肩を落とした。
やっぱりそうだ。
さっきの夢は、オレの事……日本で過ごした前世の記憶だ。
まさか、あの胸の痛みがエコノミークラス症候群だったとは。
確かに長時間椅子に座りっぱなしで絵を描いていたが……。
いや、それよりもこの今の姿だよ。
薄い青色という奇天烈な髪色のフワリンとした髪と、死んだ魚の目のような真っ赤な瞳。外に出て運動でもしろと言いたくなる程の白い肌には血管が浮かび上がり、寝起きで薄着の体は余りにも貧相。
きっと、寝て起きるまではなんの違和感もなく過ごしてきたのだろうが、前世の記憶を取り戻してしまったオレが今生をこのまま、この……なんというか、お嬢様?みたいな人間として振舞えるのかどうか。
鏡の中には、まぁまぁ愛らしいお嬢様が映っている。歳はいくつくらいだろう?小学生の低学年程か……いや、この貧相な体を見る限りちゃんと飯を食っているとは思えないから、もしかすると成長が止まっているだけで小学校中学年という事もあるかも知れないか。どっちにしろ小学生なんだけど。
こんな小さな子供が薄青色の髪。だけどそれが不思議と違和感がないのは、この部屋の雰囲気のせい。
オレ自身だけではなく、この部屋もお嬢様なのだ。
オレが3人は寝れそうな大きなベッドに、あり得ないほどフワッフワフッカフカした敷布団……ベッドの場合敷布団って言うのか?マッドレス?かけ布団もフカフカしていて軽いし、なんか良い匂いがした。
ソファーまでフカフカで、テーブルの上にはオレが昨日そこに置いた綺麗な石が1つ。
宝石とかそんなんじゃなくて、本当に砂場にでも転がっているような至って普通の石なのだが、手に取ってみればその石は物凄く、エゲツナイ程オレの手にフィットし、握り心地が非常に良い。
あぁ、現実を把握しないと。
オレは確かに昨日までお嬢様だったし、その記憶もある。そこへヒキニートな前世の記憶が夢として現れ、そのまま戻ってしまった。なのでオレはヒキニートの感覚のままお嬢様を生きなければならなくなった訳だ。