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ドアの前まで歩いてしゃがみ込むと、ドアの向こう側でもフィンが同じように部屋の中を覗き込んでいた。
ドア越しに、久しぶりに顔を見てみれば、さっきまで散々自分には味方なんかいないって思っていた事が揺らいでしまった。
なに?ちょっと顔を見ただけで、何でそんなホッとしたような顔してんの?
なんでそんな嬉しそうに笑うんだよ。
「エイリーン様、ご存知ですか?私、エイリーン様専属の侍女なのですよ」
あぁ、まだオレ専属の侍女なのか。
こんな扱いを受けている俺の専属……それを始めに言い渡された時、フィンはどう思っただろう?
魔物の子かも知れないモノの専属だ、それはもう深く深く絶望したのだろう。
なら、オレは少しでもフィンにとっての良いお嬢様となろう。
「親父よりもオレを優先してくれるって事かな?」
冷静に考えたら雇い主である親父を優先するのは当たり前の事なんだけど、別にこの答えが聞きたい訳じゃないから、なんと答えられたって良いんだ。
親父より優先して欲しいってオレの気持ちを伝えたかっただけだから。
「私の1番はエイリーン様です」
おー、言ってくれるね。
「じゃあ、ドアの事はフィンに任せるから。ちょっと離れてくださいましっ」
大きく頷いたフィンの姿が見えなくなり、足音が聞えた。
さて、どの魔法でやろうか?
火魔法は却下で、水魔法は水圧がちゃんと足りるか分からない上に部屋中ベッチョベチョになるから却下。風魔法でドアをギッタギタに切り刻む?地魔法で岩を出してドアにぶつけて木っ端微塵にする?
どれも結構派手だな……なら既に開いている小窓を広げる感じにする?それとも鍵の部分だけを吹き飛ばしてドアは残そうか?
まぁ、やってみて無理なら小窓を広げるかな。
じゃあ使うのは風魔法で……ドアノブ周辺を吹き飛ばせばいけるでしょ!
良い所を見せようと、1度の魔法発動で華麗にドアを開けてやろうと、そう気合を入れたのが駄目だったらしい。
ドアノブ周辺だけを吹き飛ばすつもりが、ドア自体が吹き飛んでしまい、廊下の壁に豪快にぶち当たって大破した。
味方のいない部屋の外になど出たくない……なんて思いと共に。
「フィン!大丈夫……そうでよかったよ」
廊下に出て左右確認すると、結構遠くの方で頭をガードしつつ壁を背にしてしゃがみ込んでいるフィンが目に入って、安心して思わず笑ってしまった。




