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パタパタとスティアが戻って来る頃、オレは既に女子寮に向かって歩き出していた。
侯爵邸から見ると城も女子寮も同じ方向にあるんだけど、城に行くつもりは無くて、さっさと自室に戻りたい。
魔法学校を去って魔剣士になるための修行をするのではなく、夏季休暇の間に修行をすれば良いんだってついさっき気が付いたから、ベッドにセットした毛布人形と校長に充てた休学届けの破棄をしにスグに戻りたいだけ。
「お嬢様!待ってください」
走って追いかけてきたスティアの手には、赤よりも少しだけ濃い色のバラ9本から成るブーケがあった。
ここはナナを連想させるピンク色の方が良かったんじゃないのか?
まぁ、本当にナナへ持って行く訳じゃないんだから何でも良いのか。
あ、そうだ。聞いときたい事があるんだった。
「スティア、城のシャンデリアは落ちました?」
どんな答えであれドラードはキャラクター化を果たしたのだろうから、別に聞く意味なんてのはないんだけど……友達の最後の有様位は聞いとこうかなって。
「はい……無事に降ろされました」
え?降ろされた?
いやいや、そんな和やかな雰囲気の絵は描いてないぞ?
「どういう状況?」
状況報告を頼んでみれば、スティアは口を閉ざして俯いてしまった。
この感じ……良い気分はしないな。ここもイベントの一幕か?だけどナナがいる様子は無いから、まさか好感度アップイベントが始まったのか?
緊張しつつ言葉を待っていても口を硬く閉ざしてしまったスティアは何も語らない。その代わり、俯いていた顔を上げ、真剣な表情でバラのブーケを差し出してきた。
受け取る事が何かの合図になっているのだろうと覚悟をして受け取り、技とらしく花の香りなどを楽しんでみても、特に何も起こらない。
ここで何か喋る事が合図になっている?
「良い香りですわ」
「あ、ありがとうございます……」
うん、スティアが照れただけで特に何も起きないな。
どうする?ここでナナっぽい言葉でも浴びせかけて好感度アップイベントのバグを起こしておくか、流すか……流すと言っても、イベントの正解を知らないんだから狙って出来るようなものでもないが。
だけど、ナナなら絶対にしない行動なら分かる。
「それではおやすみグッナイ☆ご機嫌YO!」
軽快な挨拶の後、間髪入れずに風魔法で帰宅。だ!
これにて「回復魔法は不思議だね!」という内容の第8章完結です。
第9章は また少し間が空いてしまうと思いますが、第9章もお付き合い頂けると嬉しいでござますわよっ!




