16
何を勘違いしているのか。
そう質問をしたオレは、現在何故か美味しいサンドイッチを頬張っている。
何の事は無い。
ドラードが、教えてやるから先にサンドイッチを食べよう。とか言い出しただけの事。
全く、どんだけ好きなんだよ。なんて呆れてしまえれば良いのだろうが、本当に美味しいのでオレも既に2皿目だったりして……。
「美味しいな」
「うん、美味しい」
何だこの会話は。部活帰りの親友かよ!
「それで……私が勘違いしているとはどう言う事ですの?」
食後のコーヒーを飲みながら小声で尋ねると、ドラードは何でもなさそうにケロリと、
「回復魔法が使えるのは光属性のナナと俺だけ。と言う認識が間違ってるんだ」
と、結構普通の声で、結構な事を言ってのけた。
「間違ってないでしょう?光属性しか回復魔法を使えないのは周知の事実ではありませんか。そしてドラードも私を回復してくださったじゃないですか」
もしかして保険医も光属性で回復が使えるとか?単純に勇者も使えるって話?城に使えている医療班の中には回復魔法が使える人物がいても可笑しくないか。
じゃあ光属性って珍しいけど唯一の存在とかじゃなくて結構いたりするのかな?ならその対となる闇属性も?
「属性2つ以上持ちで、その上強い魔力を持っていれば、自分自身を回復する事が可能なんだ」
自分自身の回復……。
ドラードは皿の上に置いていたフォークを手に取ると、躊躇う事無く自分の腕を引っかいて小さな傷を作った。
それでも血が滲んでいるのだから、怪我をした事に変わりない。この会話の流れで傷を作ったって事は、これから自己再生を見せてくれるつもりなんだな?
それなら突き刺すとかの方が見栄えするんだろうけど、恐らくこれは乙女ゲーム内のイベントなのだろう。
いや、ちょっと待て。イベントってのはヒロインを中心にした場面でしか起こりえないぞ?
つまり今、好感度アップイベントをナナよりも先に体験出来ているんじゃないか……。
ならここは落ち着いて事を見守るより、ナナっぽい反応を返しておくのが良いのだろう。
ナナっぽい反応……。
「ドラード様血が出ていますわ。見せてください」
うん、結局なんか冷静な返しになってしまった。




