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完全無視しているのにフィンは毎日やってきて、可笑しな事を毎日言ってくる。
毎日来るんなら食事も持ってきてくれれば良いのに……そこは恐らく親父が何か言ったのだろう。もしかしたらオレ専属の侍女って役職がなくなった可能性もある。
しかし……オレが自分でドアを開けられるのなら鍵をしている意味はなんなんだ?鍵を壊したから開ける術がなくなった。とか?それならドアを取り替えれば済む話じゃないか。
そりゃね、単なる木製のドアなんか風の魔法を何回かぶつければ如何にかなりそうだし、火事になる事を一切考慮しないなら燃やすのも手だ。水圧を意識してウォーターカッターっぽくすれば水でもいけそうだな。魔法で出現させた石や岩でドアを破壊するって考えたら地でもありだ。
けど……味方もいない場所に進んで出て行くなんて無駄な事はしたくない。ってな訳でズット、ズーット無視してるんだけど……。
「エイリーン様」
来るんだよ。
いや、オレ専属の侍女だから一応来ているだけで、特別な意味はない筈だ。だから、もう来るな。とか、帰れ。とか、そんな言葉を投げてやる必要もない。
「……エイリーン様。今日こそはちゃんと説明して頂きます!」
なにを?と首を傾げる事も許さないと言わんばかりにソレは目に飛び込んできた。
モップの柄の部分?ホウキかも知れない。そんな柄が、食事を出し入れするだけの小さな小窓から差し込まれ、梃子の原理かなんなのか、その小窓を破壊しようとしているのだ。
とは言え所詮ホウキかモップかの柄、スグにバキッと折れてしまった。
スッと出て行く折れた柄は、次には新しい柄となって差し込まれた。
どうやらフィンは何本ものホウキかモップを用意していたらしい。
一体、なんの、どんな説明を求めてるんだ?
屋敷中のホウキかモップが折れたら諦めてくれるだろうか?
こんな行動に打って出るんだから、今日は諦めても明日また何かしらで小窓を破壊しようとしてくる?
「何故、鍵を、壊されたのですかっ!旦那様の鍵まで、何故ですか!」
破壊活動をしながら質問してくるとは。
まぁ確かに、色々説明不足だったかもしれない。
「魔法学校へ行く。その為の勉強に集中したいから、邪魔しないで欲しい……のよっ」
「……応援もしては駄目なのですか?お願いです、開けてください……」
は?
応援?
「魔術と、剣術の勉強だけど、それでも応援するのか?」
一人前の生贄にしたいだけなんだろ?そう親父に頼まれたんだろ?
「私、こう見えて剣術には覚えがあります!基本的な事なら、教えられます!」
剣術に覚えが……じゃあ何で剣じゃなくてホウキかモップを持ってきてんだよ。




