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令嬢ごっこはもう終わりだ。
「皆様、もうよろしくてよ?ナナさんの所へお戻りなさいな。シャンデリアは必ず落ちますわ。それを私のせいにすれば宜しいではないですか」
どうせこの場面もイベントなんだろうから、近くにナナがいるんだろう。適当に魔法を放てばそれっぽい怪我をして、ドラードが回復して、それで終わり。
朴念仁にはしたくないけど……そうなんだよな、キャラクター化してないとオレと友達だったドラードの身が危険なんだ。
それに、キャラクター化すればオレが鍛えた分のステータスはなかった事になって弱くなる。
出会った頃のドラードのステータス数値なら、今のオレでも勝てるだろう。
後はもう気持ちの問題……もう1度セミオンのおにぎりが食べたかったし、ドラードの作った卵焼きも食べたかったし、また3人でサンドイッチとか食べに行きたかったんだ。
うん、夢の話しは終わりだ。
現実を見ようじゃないか。
「お嬢様、今のはどういう……」
「細工なんかしてないんだろ?」
まるで物語の台詞みたいな返事だよな。
そう姉が打ち込んだ台詞なのか、2人からの生きた言葉なのか……どうだって良いさ。
「スティア?貴方まだ私に謝りたいのね。だったらこれで帳消しにして差し上げますわ」
オレはそんなそれらしい台詞を吐きながら氷の粒を出せるだけ出して風に乗せて上空へ運び、雹や霰のように降らせてみた。
人間に当たっても痛みを感じる位で怪我をするまでの威力はないが、ナナに当たれば大袈裟な怪我になる筈だ。
「キャァ!」
ほら、思った通り。
「え!?」
「ナナ嬢の声?」
そしてスティアとノータスの2人は声のした方に向かって走って行った。
さて、後は1番の重要人物であり、まだキャラクター化していないドラードをどうやって声のした方向に向かわせるかが問題だな。
「エイリーン、食事は中止なのか?」
いや、そんな残念そうな顔しなくても良いだろ?
「恐らくナナさんが怪我をしましたわ。回復魔法をかけに行ってあげてくださいまし」
これで、終わりだ……。
「何故?」
……え?




