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ギルドで依頼を受け、町を出ての本格的な討伐をする事になった。
依頼主は商人で、荷物を隣町まで届けるのでその護衛をして欲しい。と、まぁこれだけを聞けば討伐依頼でもなんでもないのだが、この商人、少々の事実を隠して依頼した厄介な依頼主だったのだ。
まさか、既に山賊に狙われている身。だなんてね、悪い冗談かと思ったよ。
「キヨタカ、お前ならどうする?」
一緒に依頼を受けた冒険者、ヨシノボリ・クロさんが、ニヤリとオレに話を振ってくる。だからクロさんにとっては難しい依頼でもなんでもないのだろう。
「敵の数も属性も分からないし……いや、防御壁で馬車の四方を覆えば良いのか」
そう言いながら馬車を防御壁で覆ってみて問題に気付く。
これじゃあ進めない。
「ははっ!そんなMP大量消費してるようじゃあ長期の依頼は受けられねぇぞ」
防御壁を出せば敵の攻撃から馬車を守る事が出来るが、前に進めないようでは意味がないうえにMPの消費はそこそこ多い。
賊に襲われる度に防御壁を出すにしても効率が悪い。だけど、それ以外に馬車を守りきる術が思い付かない。
「レベルを上げてごり押し……風魔法で加速して押し通る?」
どれもこれも口に出している最中から違うのだと自分で分かる。
「お前さんに足りないのは周りの人間を頼る甘さだ。1人で防御壁を出すより、四方を4人で壁出した方が良いだろう?」
バシバシと肩を叩きながら笑っているクロさんは知らないんだ。
この世界がオレにだけ厳しい事も、回りに頼る事の危険さも、いつ誰が何処で敵になるのか分からない状況も。
説明した所で、なんにもならないんだけどさ。
「クロさんならどうするんです?」
喋っている場合でもないのだろうけど、周囲を頼らない理由でも聞かれたら厄介なので先に話しを振ってみる。
「ここは、お前さんに習ってMPの無駄遣いってのをしようじゃないか」
え?と声に出すよりも早く、クロさんは両手を地面に着くと尋常ではないほどの魔力を流し始めた。そしてそれは馬車の周りを覆う防御壁に変化する事もなく、賊が隠れているだろう木の陰とか岩の陰とか、ここからじゃあ死角になっている場所に向かって伸び、棘として地面から突き出したのだった。
四方八方から聞こえてくるのは悲鳴や呻き声だ。
「……怖っ!」
人間が相手でも容赦のない攻撃を、躊躇いもなく全力で放てるクロさんこそ甘えがないように思えるんだけど……。
冒険者を敵に回すのは止めた方が良いな。
まぁ、ナナのヒロインマジックにより勝手に敵となる場合は知らないけどさ。
それを考えると、こうして戦い方を見るのは今後の対策になりそうだ。




