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第2のヒキコモリ人生を送る事にしたオレは、これまでに得た知識を書き記したノートを眺めながら復習をしている所だ。
後数年したら魔法学校へ通う事になるから、魔術に関しては学校で学べば良いと思ったのだが、それ以前の知識ってのが必要になっているかも知れないからな。
前世で例えるなら、中学校へ通う時には小学校で学んだ知識を得ている事が前提になっているのと同じ。
ここで、ある程度のひらがなを書ける幼児が幼稚園に通い始めたらどうなる?
天才だと一目置かれる存在になるはず。
それはつまり、生贄として選ばれ難くする要因になるのではないか……なんて、単なる悪足掻きか?
いいや。オレはただでさえ令嬢としての振舞い方で他の令嬢達とは比べ物にならないほど劣っている。それこそサルと呼ばれるほどには。ここで魔力も大した事がないようでは目も当てられない。
オレは魔法学校入学するまでに、誰よりも魔力が高くなければならないのだ。
光魔法を所持している主人公よりも、だ。
まぁ、光の素質を持っていれば、魔力が微量でも凄いんだよ。何がどう凄いのかは知らないけど、姉の記したメモにそう書いてあったのだから、凄いんだろう。
複数の素質を持っているオレが、明らかに自分よりも魔力の少ない主人公に対して嫌がらせをしてしまうほど……。
物凄く不自然だけどな。
主人公に嫌がらせをして断罪されてしまう悪役令嬢。その嫌がらせを始める切っ掛けってなんだったんだ?
そんな設定を姉自身が考えていなかったとも考え難い……だって、考えるのが面倒なら、メインキャラクターである王子の婚約者で、主人公に奪われそうになったから嫌がらせを始めたーとかの方がお約束だし、自然だ。しかしオレは魔法学校に行く時にこの部屋から渋々出される事になる訳だから婚約者など存在しない。
恐らくねじくれたおした性格になっているのだろうが、友達も信頼出来る人間もいないオレが主人公に嫌がらせをする勇気があった事も不自然でならない。
ともかく、嫌がらせさえしなければ生贄にされる事は……あるかも知れないか。
あっ!
魔力が高く屋敷の中に閉じ込められているオレって、もしかして生贄にされる為だけに生かされてるんじゃないか?
そうだよ、生贄を出した家には褒美があるんじゃないか。そして親父は彼方此方で子を生ませていて、その全員を自分の子と認めて屋敷に住まわせている。
もしかしてこの家が裕福である理由って、生贄産業による潤いだったりして?




