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冒険者のままレベルを上げ続けて「魔剣士」になる道を選んだ翌朝。
早朝のトレーニングをする為にベンチに行くと、既に準備運動をしているセミオンとドラードがいた。んだけど、何をどう間違ったのか、天変地異の前触れなのか、2人と一緒に準備運動をしているノータスもいたのだ。
どういう事?敵になるぞって明確なイベントかなにか?
「セミオン殿下、ドラード、ノータス様、おはようございます」
何が起きてもスグに逃げられるよう気を張りながら挨拶をすると、セミオンとドラードがいつもと同じように笑顔で手を振ってきた。そしてその様子を見たノータスが目を丸くしている。
セミオンは分からないが、ナナと一緒にいる時のドラードは朴念仁だからな、こう微笑ましい光景などは想像も出来なかったのだろう。
「エイリーンおはよ。今日は1人見学者がいるぞ」
えぇ、見れば分かりますとも。
「エイリーンおはよ。俺達が強くなった理由を聞かれたので、説明するより参加させた方が良いと思って呼んだ」
ほぅ、そういう事か。
「……おはよう。2人の強さにお前が関係していたとはな」
ノータスは苦々しそうではあるが挨拶を返してくれたので、早朝訓練への参加を許そうじゃないか。
しかし、強さの秘訣って程の事なんか何もしてないんだけどな……ちゃんとした特訓をすれば誰だって強くなるもんじゃないのか?特にこの世界はレベルって概念があるんだから少しでも動いていれば経験値が稼げる訳だし。
まぁ、考えてもしょうがないし始めるか。
「そうですわね、では少し体力を見たいので走りましょうか」
ノータスは騎士志望という目標を早い段階から定めていたのか、魔力に関しては荒いが剣術はしっかりと出来ている印象だった。
オレが騎士の訓練に行かなくなってから結構経っているが、今でもそうなのだろうか?
中庭を走り終えた後は素振りだ。
「では皆様、いつも通り剣の素振りをお願い致しますわ」
騎士の訓練でも使われているような綺麗な木刀は用意出来なかったので、走りながら見付けたお手軽な木の棒を3人に手渡した。
重さは結構あるけど、本物の剣に比べると軽い。
「剣じゃなくて木だな」
軽いツッコミを入れられるほどセミオンは少しばかり走っただけではバテなくなったし、毎日騎士の訓練を受けているノータスも流石に涼しい顔でブンブンと木を振っている。
約1名、肩で息をしたまま無言のドラードにとっては、渡した木は杖代わりのようだ。




