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結構な大怪我をして授業を休み、数日後教室に表れた人間がいたとしようじゃないか。
一般的な態度は恐らく好奇の目を向ける事位だろう。それが親しい人間ならば無事を喜ぶ声があったりもしそうなものだ。例え嫌いな人間であったとしても、
「よく平気な顔をして出て来れたな、恥を知れ!」
等と罵倒されるのは可笑しいと思うんだよ。
まぁ、ナナを攻撃しようとして失敗した挙句の果ての自爆で大怪我を負った事になってるのだから、攻略対象者であるアフィオの態度は正解……なのか?
いやいや、攻撃されたのはオレだし!
「あらードラード様おはようございますー」
完全にアフィオを無視し、魔法書で顔を隠していたドラードに声をかければ苦笑いを浮かべられた。
「エイリーン譲、おはようございます。怪我の具合はどうですか?」
パタンと魔法書を閉じて机に置き、表情を改めて挨拶を返してくれたのでオレはドラードを友達だと思う事にした。
「少しフラ付きますが、問題ありませんわ」
と、一応具合はまだ悪いアピールをしてみると、途端にスティアがこっちを振り返ってきた。その顔は青く……なんだろうな、首元が少し赤い気がする。
侯爵邸にはスティアの親父も住み込んでいるのか?
そしてまだ理不尽な暴力を受けて?
いや、敵であるスティアの身の内なんてどうでも良いんだよ。そうそう、少し赤くなってる位なんでもないじゃないか。
こっちは物理的に頭が割れたんだから。
「まだ具合良くないのか!?」
今日を朴念仁崩壊記念日と名付けよう。
「そうですわね……中庭なら1周走っただけで息が切れてしまいそうですわ」
「元気っ!」
今日を、ツッコミ記念日としても良さそうだ。
そもそも昨日一緒に冒険者登録に行っただろ?噴水の中を小さな指輪を探してさ、具合が悪いんなら日を改めてるって。
「いや、本当に走るなよ?」
そう言いながら机に顔を伏せていたセミオンが顔を上げ、眠そうな顔を向けてくる。
どうやら徹夜が相当堪えているようだ。なら少しだけでも目を覚ましてあげよう。
「セミオン殿下が一緒に走ってくださると安心ですわ。ね、ドラード」
「えっ!?」
「えっ!?」
なんだよ。
セミオンはともかく、ドラードは冒険者になったんだから一緒に体力作りするからな!嫌だって言っても太陽に向かって河川敷みたいな所を走って、無理矢理青春っぽい感じの学校生活にするからな!
だって俺達は友達なのだから。
これにて「冒険者になったよ!」という内容の第5章完結です。
第6章もお付き合い頂けると嬉しいですぞですわっ!




