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オレは常々不思議に思っていた事があった。
ここで言うオレとはエイリーンとしてのオレではなく、前世での俺。
ヒキニートで、人の書いた創作物を読み耽っていて感じていた違和感。
それは乙女ゲームへ転生したヒロイン、もしくは悪役令嬢達がよく言う台詞“この場面のスチルを見た事がある”ってやつだ。
彼女達の口ぶりから、スチルそのままの光景を見ている風だった。中には、このスチルに見覚えが……となった後、重大な事件を思い出す場合まで。
つまり、画面上で見ていた光景と、転生した後、実際に目で見えている光景が同じという事になっているのだ。
言ってしまえば、2次元。
ただの絵と目で見た光景が同じって事は、転生した先が2次元になっているのではないか?
そんなただの絵である攻略者達と恋愛など、どう考えてもありえないのではないか……。
それなのに、転生した者は乙女ゲームの世界だと気が付くのにそれなりの時間がかかっている。前世の記憶を取り戻すまでにかかる時間の事ではなく、記憶を取り戻した後の事だ。
婚約者である王子と再会した時に乙女ゲームの中だと自覚する者や、あれやこれやと考えを巡らせて答えに辿り付く者。
いやいや、2次元なんだから目覚めた瞬間に違和感には気付くだろ!
とか思っていたのだが……イザ自分がこうして転生してみて分かった。
3次元だわ。
見た事があるスチル!となるのは身に付けている小物とか、服とか髪型とか、状況の事だったのだ。
アニメが舞台化された時の様子に似ているのかも知れない。
そりゃそうだ。オレはフィンの顔を特徴のない顔として描いた筈なのに、実際はこんなにも……。
「先ほどからどうされたのです?私の顔に何か付いていますか?」
……可愛い。
悪役令嬢の専属侍女ってだけで、ストーリーにはあまり関係のない筈の人物でこの可愛らしさ!
主人公はいったいどんな姿をしてるんだ?
攻略対象者の顔などはしっかりと書き込んだが、実は主人公の顔は描いてない。
プレーヤーが自己投影しやすいようにとの姉からの要望で、特徴のない地味なデザインのノッペラボウにした。なので当然詳しい設定なども庶民ってだけしか分からない。
選択肢の内容も知らないんだから、主人公の性格もサッパリだ。そんな相手に対してどう嫌がらせをすれば良いんだろう。




