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恐らくセミオンルートにおいての最も重要と思われるイベントは起きた。
この世界のエンディングは少なくとも魔法学校卒業後になるから、ここでルートから外れたとしても巻き返せるポイントはあるのかも知れないが、現地点でのセミオンとナナの相性は、見る限りマイナスになってしまったようだ。
現在ベンチにはナナが座っていて、その周囲はいつものように愉快な仲間達が取り囲んでいる。
数分前、セミオンはアフィオと比べられていた過去の事や、魔法学校に抱いていた希望を打ち砕かれた話をナナにぶちまけた。
その内容はオレも聞いた事のある話ではあったが、何度聞いても酷い。
喋り終えた後、黙り込んで俯くセミオンに、ナナは恐らく物凄く優しげな表情を浮かべて励ましていた。
「セミオン殿下には、セミオン殿下の良い所がありますわ」
ナナ程の可愛らしい子からこんな完璧に近い言葉をかけられたら、どんな男だって虜になってしまうだろう。
そう、普通はそうなるのが自然だというのにも関わらず、セミオンはベンチから立ち上がると、
「適当だな」
と、立ち去ってしまったのでしたとさ。
結局、重要イベントに失敗した事は分かってもスパイなのかどうかを見極めるに至らなかったな。
これはもう本気で屈辱的な指示をポンポンと立て続けに与えた方が楽だし、確実な気がしてきたわ。
その屈辱的な指示ってのが良く分からないんだけど……やっぱり絵のモデル、やってもらおうかな?
半裸に近い格好で、場所は中庭。絵のモデルだから描き上がるまでは動くなって言えば、これはかなりキツイ。
根を上げるまで立て続けに何枚も描こうか?
それが良い。靴を舐めろ。とか、授業中に放屁。とかよりも健全だ。
じゃあ早速今日の放課後から始め……あ、駄目だ。画材がなかったんだよ。ノートとペンだけでも良いんだろうけど、ここは折角だし画材をセミオンにおねだりしてみよう。
だから今日の放課後は市場までのデートだな。
って、デートってなんだよ!
買出しだ、買出し!
どうせデートするんなら女子と行きたいわ!
切実だわ!




