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目には見えない合鍵を作った事でフィンは毎日のように部屋に来るようになった。
図書室の本の貸し出しを渋っていたのは、次にいつ部屋に入れるか分からない。そんな理由からだったらしく、ここ最近では毎日1冊ずつ本を持ってきてくれている。
フィンが部屋から退出する時は本も一緒に持って行ってしまうので、後は覚えたての知識を忘れないよう復習するのみ。
その方法はノートに記したり、エア剣を構えて振り回したり、魔力の放出をしたり。
復習以外で試しているのは、魔力で髪と目を覆って色を誤魔化す術。を、新しく生み出す事。
透明な鍵を作る事が出来たのだ、どうにかすればなんとでも出来る!と、始めは軽く考えていたんだが、そうは上手くいかないもので……。
薄い膜状の物をイメージしながら強く色をイメージすれば、煙幕のようなモワッとした空気が広がって終わってしまう。
何度やってもモワッとするだけで成功する兆しすら見えない。これなら直接髪を他の色に染めてしまった方が早い。
染め粉の作り方など知らないが……イザって時は坊主頭にしてしまうのもアリ……ではないか。
髪色は帽子やかつらを使用するのが無難か。
なら次は目の色だ。
窓から外に出る時は帽子姿で目を閉じているか、薄目にしていた。そのせいで殆ど何も見えなかったし、庭をちょろっと散歩する事しか出来なかった。
瞳の色が赤ではなく親父と同じ茶色なら、少なくとも大きく目を開けて散歩が出来る。
オレの顔を使用人が正確に覚えていたら駄目なんだろうけど、フィン以外の使用人達と顔を合わす事はほとんどない。だからきっと青毛赤目としてでしかオレを認識していないだろう。
髪と瞳の色を誤魔化せたら屋敷中を歩き回っても咎められない筈で、それこそ自分で図書室に行って本を読みふける事も出来る筈だ!もしかしたら使用人の振りをして外出まで出来てしまえるかもしれない。
そんな自由な暮らしの為にはまず、目を覆って色を誤魔化す術を完成させなければならない。
魔力を持つ人間にはそれぞれが使える属性ってのが決まっているらしく、1人1属性。との魔術本情報。
だというのにオレはイメージさえ掴めれば火でも水でも出す事が出来る。空気の層を出して煙幕っぽい物が出せているのだから風も使えてるっぽい。それにあの合鍵……あれは属性で言うと何になるんだ?
1人1属性だというのだから、色々使えているように見えるオレにも属性がある筈だ。
それを見極めない事には、新しい術の開発など出来ないのかも知れない。




