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フワンフワン。
窓の外からまぶしい光が入ってくる頃、俺は連日寝る間も惜しんで描き続けた絵の完成を1人で祝う為に大きく伸びをした。
作業中はトイレに立つ時間さえ惜しいので基本的には断食断飲なのだが、思った以上に時間がかかってしまった。
こんな重労働をしたのにはちゃんとした理由がある。
過程を省いて言うならば、俺はヒキコモリで時間をもてあましていたから。
もう少し説明を加えると、俺は少しばかり絵が描けるから。
更にもう少し説明をすると、姉は同人ゲームを作っているから。
まとめると、ヒキニートで時間ばかりをもてあましていた俺は多少なりとも絵が描け、同人ゲームを作っている姉には絵心がなかった。その為こうしてゲームに使用する絵を俺が描いている。という事なのだ。
そんな訳で、登場人物の姿絵、喜怒哀楽の顔パターン、各キャラの絵を数枚にタイトル画面の絵で……えっと、何枚描いたんだっけ?
まぁ、たくさん描いた。
「っし、送信っと」
ポチポチーンと姉に画像を送りつけておしまい。
作業期間中の生活費は姉が負担してくれ、その上1枚につきお駄賃が千円出るというから、えっと……。
まぁ、沢山描いたのだ。
俺の絵はこの後姉により同人ゲームに使用される。だから忘れた頃にゲームのサンプルが届くのだろう。
ゲームはシミュレーションで、いわゆる乙女ゲームという奴だ。内容や各キャラクターの性格などは絵を描く前に細かく書かれた設定集を読み込んだからある程度は知っているし、冒頭のナレーションだけならば既に完成していたので何度も読み込んだ。だから後は姉の性格と趣向を考慮し、今までのゲームを参考にすれば大体どんな乙女ゲームが出来上がるのか凡その予想が付く。
さて、少し寝るか……。
パソコンの電源を落とし何時間振りかに立ち上がって大きく伸びたのだが、その直後、酷い胸の痛みに襲われた。
これはいつものだな。と軽く考えようにも、どうやら今回は呼吸もしんどい。それに頭もボーっとしてきて……。
これは単なる寝不足だろうな。
布団の中で眠りたかったが、崩れ落ちそうな体を立て直すだけの体力はもうない。
仕方ない、今はこのまま寝てしまって、起きたら何か美味しい物でも食べよう。
フワンフワン。