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第二十三章 ようやく動くみたいですね

 

「ごぶっ、べぶふっ……ああくそ、やっぱ強いなあ、我らがクソロリボディ様はよお!! まーあー? 女としての魅力はゼロだがなっ!!」


「あーあ。これでボディがグラマラスならどんな無茶振りもご褒美に変換できたんだがなあ。ロリペタ女に上から命令されたってやる気出ねえよ」


「きゃは☆ ……壊し足りなかったかなぁ? 軽く臓物ぶちまけたほうが良かったかもぉ???」


 いくらなんでも状況が状況である。頭にのぼった血液が噴き出たことで思いとどまる余裕が出てきたのだろう。乱闘を切り上げ、クソッタレどもは改めて目の前の状況に目を向ける。


「任務達成は無理、代わりとなる手柄として男爵令嬢付近を調べたが核心までは掴めず、このままだと第一王子に処分されるのも時間の問題。なあ、おい。詰んでねえか?」


「そうねぇ。安全策を選んでいたらぁ、確かに打つ手なしかもねぇ」


「なんだよ、ロリペタ兵士長様。三十路らしく年の功でも発揮してくれるのか?」


「まだ三十路いってないわよぉ!! じゃなくてぇ、確かに状況は致命的だけどぉ、攻めるべき箇所は決まっているよねぇ」


 つまりぃ、とアリス=ピースセンスは舌なめずりをこぼしながら、


「アイラ=ミルクフォトン男爵令嬢が現在進行形でやらかしている『何か』を暴き食い止めることぉ。それができればぁ、首の皮一枚繋がるってことよぉ」


「つってもな。限りなく怪しいってだけだ。例の男爵令嬢は単純に男に人気があるだけでしたーってなったら、下手につついた結果第一王子の怒りを買うだけで終わるかもしれねえぞ」


「あのメイドは嘘やハッタリを使うような奴じゃないわよぉ。そんなものに頼るまでもなくぅ、世界を引っ掻き回せるだけの暴虐を手にしているしねぇ。だからぁ、必ずあるのよぉ。アイラ=ミルクフォトン男爵令嬢には第一王子よりも『厄介』だと表現するだけの何かがねぇ」


「ああそうかい。なら男爵令嬢が黒だとして、どうするってんだ? お得意のスキルでも調べられねえもんを今から右往左往した所で調べられるわけがねえ。男爵令嬢に何かがあったとして、それを証明することは不可能だ」


「本当にぃ? 一つだけ確実な情報源があるよねぇ」


「……、おい」


 ゴロツキどもには心当たりがあった。あったからこそ、最初から切り捨てていた選択肢であった。


「まさかとは思うが、アイラ=ミルクフォトン男爵令嬢本人こそが確実な情報源だ、なんて言わねえよな?」


「まさかとは思うけどぉ、それ以外にあるとでもぉ?」


 馬鹿げていた。

 確かに何かをしているだろう男爵令嬢は全てを知っているかもしれない。だからといって、彼女を襲うなんて選択肢はあり得ない。数多くの有名貴族と繋がりを持ち、今頃第一王子の妻となっている女である。そんな相手を疑うことすら危ういというのに、襲撃なんてしようものならヘグリア国全体を敵に回すことだろう。


「時間がないしねぇ。残された時間で代わりとなる手柄を立てるにはぁ、多少強引でも突き進むしかないわよねぇ」


「はぁ。なんでテメェはロリペタなんだか。こんなのただの無茶振りだ、全くもってやる気が出ねえよ」


「違いねえ。おいネコミミっ、蔑むような声で、何なら思いっきり踏んづけた上で、未来の王妃襲えって命令してくれねえか!? そっちのほうがやる気が出るってもんだ!!」


「にゃあ?」


「きゃは☆ そんなにやる気出したいならぁ、わっちがミンチになるまで踏み潰してやるけどぉ?」


 ぶつくさ文句を言いながらも、一人として逃げようとはしなかった。友情だなんだという話ではない。自分が殺されて、他の奴が生き残るような結果になれば死んでも死に切れないからである。つまりはどうせ死ぬならテメェらも道連れだコラというわけだ。


 ……本当にクソッタレしかいないものである。


「それじゃ反撃といきましょうかねぇ! さぁクソッタレどもぉ、たまには国を蝕む悪を砕くなんて兵士らしいお仕事といこうかねぇ!!」


「うにゃ? お仕事かにゃあ???」


「はっはっ! なーにサラッと体裁整えてんだよっ。国を蝕むだあ? 男爵令嬢が何やってるかも分かってねえってのによお!!」


「つーか、あれだ、今からやるのって未来の王妃を襲うっつークソみてえな反逆行為だよなあ!!」


「自分の命を守るためになあ! こりゃあ兵士らしさなんざどこにもねえぞ、おい!!」


「きゃは☆ 結果良ければ全て良しよぉ! 最後の最後にわっちたちのお陰で助かったでしょぉって言えるような状況に持っていけばいいのよぉ!!」


 さあ、反撃の時間である。

 本当に男爵令嬢が悪かどうかも分かっていないし、悪だったとして彼女の企みが国を揺るがすようなものかも不明だが、こういう時は誇張するくらいが丁度いいのである。国を守るために悪を砕く。わざとらしいほど綺麗な建前だが、だからこそ免罪符として機能するのだから。


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