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補足

 眠くなってきた。皆の声が遠くに聞こえる。お酒を飲んでしばらく経つといつも眠くなる。食事は冷めてきた。

 だんだんと思い出話も尽きてきた。何人かは帰ったのかな。他に話す相手もいないし、そろそろ帰ろうか。

 そう考えた時だった、金髪の大柄な男が近づいてきたのは。

「久しぶり岸川さん。元気だったか」

「元気だよ。達川さんは?」

「おもっきし健康体だ。風邪一つ引かねえ」

「それはよかった」

 話しかけられるとは思っていなかった。今度こそ忘れられたと思っていた。達川は私の右隣に腰掛けた。上下とも灰色のスエットを着ていた。

「岸川今何やってんの?」

「大学生。今四年」

「じゃあもう今年で卒業か?」

「まだだよ。薬学部だから、あと二年通わないと」

「薬学部か。すげえなあ。頭良かったもんな」

 達川は一口ビールを飲んだ。

「将来は薬剤師なんのか?」

「国試受かればね」

「すげえ」

 ずいぶん飲んだようで、彼の息はかなり酒臭かった。頬が赤くなっている。

「達川さんは何やってんの?」

「俺? 鳶やってる。高校卒業してからずっとだ」

「高いところ登ったりするの?」

「もちろん。それでなきゃ鳶にならねえよ」

 もう一口酒を飲むようなので、つられて私も口をつけた。

「俺結婚したんだ」

「へえおめでとう。子どもはいるの?」

「いるよ。三歳の男の子と、あと嫁さんの腹ん中にもう一人いる」

 嫁さんという言い方が所帯じみていると感じた。

「もうお父さんなんだね」

「そ。もう子どもがかわいくてかわいくてたまんねえよ。世界で一番かわいいんじゃねってくらい。あ、そんなこと言ったら嫁さんに怒鳴られんな」

 達川は少し笑った。その顔はもうおじさんだった。普段全然関わらないタイプの人と話をできるのが同窓会の一番いいところだ。

「岸川さん二次会出んの?」

「二次会はパスする。もう眠くて」

「大学生だもんな。俺も二次会は出られねえ。嫁さんに叱られる。子どもをよう、風呂入れてやんだ。それは俺の係。マジ毎日楽しいぜ。大変だけど」

「いいなあ」

「岸川さんも彼氏作って結婚しろ。子どもマジいいぜ? あ、呼ばれてる。じゃあな」

 達川は立ち上がった。彼が向こうへ行きかけたとき、私は思わずつぶやいた。

「彼氏くらい……」

「あん?」

「私だって彼氏くらいいるんだけど」

「うっそマジ? びっくりした。今日一番の驚きだわ」

 達川は手を口に当てる。そして誰かに手を引かれて、笑いながら私に手を振って去っていった。

 つくづく不思議な奴だった。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

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