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003 最推しな私

ちょっと短め


「『ステータスオープン』」









ラムダ


年齢:12歳  性別:男性

種族:人族   職業:なし


Lv:3

HP:428   MP:2273


筋力:D

俊敏:D

精神:D

体力:C

魔力:SS

器用:A

幸運:E


スキル:

【モノマネ】





「あ、レベル1つ上がってるな…ってうわ、MP増えてるなぁ!

結構な勢いで消費したのにこれだけ残ってるとか…


多分、1レベルで1000くらい上がってる?やっぱSSってチートランクだなぁ…」







そんなことをブツブツ言いながら、生き物の気配に気を付けつつ落ち着けそうな場所を探す。


はぁー、せめて回復系の魔法が使えたらなぁ……【治癒魔術】系統のスキルが無いと、この世界では怪我や病を治す魔法が使用できない。

せっかくの魔力チートなのに、自分の体一つ癒せないとか、すごい惨めな気分になるよ……



っと、この辺なら座って衣装を取り出しても大丈夫そうだな。

魔物も…多分近くには居ない。よし、ここでいいや!




このショボクレた空気を払拭するために、私は前世で一番の「推し」だったキャラの衣装を取り出すことにした。

【収納】からセットを選択することで、化粧道具と合わせてポポンッと見慣れた衣装が現れる。


暗めの赤をベースにした貴族風の、でもヒラヒラしていないシュっとしたデザインで、宝飾も華美にならない程度にあつらえてある。

衣装の色に合わせた装飾を施されたエストック(中身はプラスチックだよ!前世の世界で刃物持ち歩くのは犯罪だからね!)もきちんと完備されていた。

揉み上げの長い銀髪ウィッグも勿論揃っている。




「おっほぉぉぉ!シュレ様ーーー!シュレイグス様の衣装だ!前世そのまんまだ、ありがとう神様!!」




目の前で焼けていった翼もしっかり復元してある!ああもう、これだけで私は満足です!

あ、カラコンも残ってた。マジで全部あるじゃないか、神様最高かよ!

身体が痛いのだって気にならない!ゴブリンなんて知るか!私は今日この日のために今まで頑張ってきたんじゃー!!












ふぅ、ちょっと落ち着こうか。




ちなみにシュレイグス様のフルネームは『シュレイグス=ロキ=テンターク』。愛称はシュレ様。


天地のストーリーモードで敵としてプレイヤーを翻弄したり、イベントボスを務めたり、たまに味方になったりする悪魔族の公爵様だ。



シュレ様は天地ユーザー間で最も人気のあるキャラだった。特に女性層。


なんてったって美形!超イケメン!そしてちょっぴりSっ気があって、でも時々見せる優しさがグッとくる!


基本的には愉快犯だけど、人族、特に王家に連なる者を酷く恨んでいる過去設定があって、ストーリーモードでシュレ様編を進めることで明らかになるんだけど、

そういった過去に影があるようなとろこもポイントが高い。


公式で定期的に行われていたキャラ人気投票も、九割の確率で1位になるし、

グッズも二次創作もダントツで数が多かった。



そして私も例に漏れずシュレ様の大ファン。コスプレした回数も一番だった。






早速シュレイグス様の衣装を着こんでいく。もうこの時点で私のテンションはほぼ頂点である。


流石神様が用意した衣装というべきか、リンコだった時の体格と変わっているはずなのに、ピッタリフィットした。




…ボンボンとして育ったせいか、リンコの時より若干ふっくらしてるな。


よし、今後の目標の一つはダイエットだな。これ確定。



まぁ、これからは生活を安定させるために必死になるわけだし、自ずと痩せるだろうけど。

逆にガリガリになってもみすぼらしいから、見た目には気を付けていこう。


なんせ大好きなキャラのコスプレをするのだ。今後も絶対にやり続ける。なら、無様な姿でやるわけにはいかないからね!





しっかり着込んだら、次は化粧だ。化粧セットに付いていた手持ちのスタンドミラーで自身の顔を見る。


「うげ…やっぱ痣になってる……化粧で隠せるかなぁ…」


ゴブリンにやられた怪我が痛々しく鏡に写っていた。

うーん、シュレ様の顔にこんな痣があってはならない。これは頑張って隠さないと。


むしろ腫れあがって顔の形が変わってるような状況じゃなくて良かったというべきかもしれない。



よし、頑張って隠そう。前世は平凡女の顔を少しでも本家に寄せるためにめっちゃ頑張っていたのだ。

このくらいで弱音を吐いていたらコスプレイヤーなんてやってられん!


そして私は、前世の知識と技術を総動員して「シュレイグス=ロキ=テンターク」の顔を作っていった。







1時間ほどでかなりいい感じに仕上がった。

青痣も遠目で見れば違和感が無いくらいにはなった、と思う。


これなら若かりし頃のシュレ様、という設定でいけそうだ。

まぁ体格だけはどうしようもないからね!これから、これから!第二成長期を期待!!





嗚呼、幸せ……私今、シュレイグス様になってる………自分の姿を手鏡で見ながらウットリしてしまう。

この場に姿見が無いのが非常に残念だ。どうせなら全身をしっかり堪能したい。


お金が溜まったらぜひ購入しようそうしよう。





ただでさえ高かったテンションが、さらに上がっていくのがわかる。


誰も見ていないし、いいかな?


私はコホンと一つ咳払いをし、かつてレイヤー仲間によくせがまれた台詞をノリノリで喋った。


「クックック……ようこそ異邦人、神に導かれし哀れな羊よ。よくぞ我が遊び場の最上階まで攻略した。ここまで到達できたこと、とても喜ばしく思う」




バサリとコートを翻し、天地でプレイヤーが初めてシュレイグス様に出会うイベントの台詞を綴る。


自分の最推しの台詞だけあって、未だにしっかり覚えている。

高圧的に、自信満々に。PCを格下のオモチャ扱いする、Sっ気たっぷりな視線を意識する。



「しかし残念ながら、今宵君の相手を務めるのは私ではない。


紹介しよう、我が忠実な僕であり、私の最も信頼する部下だ」




そして私は大仰に両手を前に突き出す。


この時のシュレイグス様の超悪そうな笑顔を演じることも忘れない。誰も見てないけど。


自己満足だからいいのだ。




というかマジでテンション突き抜けてきたわ。本気で自分がシュレイグス様になったような気分になる。心なしか視線もいつもより高い気がしてきた。


今なら背中の翼で空も飛べる気がする。




「汝が主が命じる。血の契約に従い、その姿を現せ。【イヴィ】!!」







シュレイグス様の【悪魔召喚】というスキルで召還される悪魔たち。


その中でもレギュラー枠なのがシュレイグス様の右腕と呼ばれる女悪魔イヴィだ。




前世では私はイヴィのコスプレはしていなかったけど、イヴィファンの子がコスプレをしていたので、お互いが揃った時はこうやって私が召還の真似事をし、イヴィコスちゃんが登場する、というのをやっていた。










フィィィィィィ………






そうそう、こうやって私の目の前に魔法陣を描いて、そこからイヴィコスちゃんが出てきてるって状態を写真に撮ったりして……


まて、この魔法陣どっから出た?てか光ってない?


あ、何!?なんか出てきた!?アレ頭!?

えぇーーーー!なにこれぇーーーーー!?何が起きてるのぉーーーー!!!?





突き出した両手の向けられた地面に突如として描かれた魔法陣。


そしてそこから人型の何かがゆっくり浮上するように出てくる。


私はただ茫然とその様子を眺めていたが…










「主の第一の僕、イヴィがここに。」




ミニのタイトスカートに燕尾服のような上着、ガーターベルトで吊られたタイツにシャツのボタンを弾き飛ばさんとばかりに揺れる胸。


薄紫のストレートロングをなびかせた褐色肌のセクシーな女性が、恭しく私に向かってお辞儀をした。




背中にはシュレイグス様と同じ悪魔の羽。


お尻にはスラリと長い、先端がカギ状になっているしっぽが生えていた。














あれ、これマジモンのイヴィじゃね???




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