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002 魔力チート、のはずだけど

修正に修正を重ねてたら、最初に投稿してたものとかなり変わってしまいました。

小説ってむずかしい…



「あら、かわいい。」


一人のんびり街道を歩いていると、草むらからガサリと音を立ててウサギが顔を出した。


勿論ただのウサギじゃない。

【キックラビット】という魔物の一種だ。


キックラビットは【初心者用魔物】と呼ばれていたりする。

魔物の中でも特に雑魚だから、誰でも倒せるよ、という意味だ。


まぁ油断すれば痛い目は見るんだけどね。




「キュッキュィィィ!!」

「うおっと!?いきなりか!」


と、このように結構な速度で飛び込んできて、蹴りを喰らわせてくる。


今は間一髪避けれたけど、私の敏捷は生前のままD。

鈍足というわけでもないが、速いわけでもない。


咄嗟の判断力も敏捷のランクが影響するらしいし、ボサッとしてると速度重視のキックラビットの攻撃を躱せない可能性がある。


魔力の高さを活かすためにも、敵が近くに寄ってくる前に先手を取っていかないと。




なんとかキックラビットから距離を取り、初級の火魔法を放つ!



「我が敵の身を焦がせ!『ファイヤーボール!!』」




キックラビットに向けて掲げた右手から、真っ赤な球場のものが飛び出し、そのままキックラビットに向かっていく。


慌てて回避しようとするキックラビットだが、間に合わずに被弾し、一瞬でその身が火に包まれた。




「ギィ!?ギキィィィッキュゥゥ……」



身を捩り火から逃れようとするが、あっという間に動けなくなり、その場に崩れ落ちる。


火が完全に消える頃には、炭と化したキックラビット「らしきもの」が残ったのだった……










「うん…やりすぎたね……」





だって初心者用魔物とはいえ、初級のファイヤーボール一発でこんなオーバーキル状態になると思わなかったんだ!


良くてウサギの丸焼きくらいになると思ってたんだ!



実際、次兄がキックラビットを相手に魔法の練習してるのを見学してた時はそんな感じだったし!




いや、分かってる。私の魔力ランクが高すぎるせいで、初級でもかなりの威力になってるんだってことは。


家庭教師に教わったと言っても、魔法の発動の仕方とか、制御方法とか、呪文の傾向だとかが主で、実際に試すことはほとんど無かったから、

自分の魔法と次兄の魔法の威力の差について、すっかり失念していたのよね……


まぁそのおかげで、ステータス(偽)にそぐわない魔力の発覚を回避できたわけだけど。



兎に角、次兄と同じノリで魔法を使うのはダメ、ということを学んだ私だった。




丸焼きレベルならそのまま食料にすることも可能だったかもだけど、こうも炭化してるともうどうにもなりそうにない。


そもそも焼いてしまったら素材を剥ぐこともできないじゃないか、馬鹿馬鹿、ラムダの馬鹿。次兄の火魔術の印象が強すぎたのが悪い!



雑魚とはいえ魔物は魔物。3匹分くらいの皮と肉、それに魔物の証である【魔石】(キックラビットのそれは小指の先ほども無い小さなものだけど)を売れば、子供が一日凌げる程度のお金にはなる。

10匹も狩れば、宿だって取れるだろう。



キックラビットを狩るくらいなら実際はもっと大きいのを狩るが、要するに勿体ないということだ。


あぁー勿体ない…次は風魔術、いや水魔術で攻撃しよう……




ん?手荷物一つない現状で、どうやって素材を持ち運ぶつもりだって?


そりゃぁ勿論、私の隠された【スキル扱いじゃないスキル】である【収納】の出番ですよ。







「『収納一覧』」






■コスプレ


 ・アーシュカ セット

 ・アメリア=ローズ セット

 ・アンタルジィ セット

 ・イェーダ=ナジスカ セット

 ・イズエ=ヤマト セット

 ・イマル セット

 ・イルル セット

 ・

 ・

 ・








半透明の板に、ズラリと並ぶ見覚えのある名前の列。



自分が生前作り上げてきた天地のコスプレが、名前別で五十音順にどんどん表示されていく。


バラバラに収納されてると思っていたのでこの設定はすごくありがたかった。





で、だ。


試しに目の前の炭を【収納】の中に放り込んでみる。




■コスプレ


■その他

 ・魔物(炭)






とまぁこんな風に、コスプレ欄とは別口で表示してくれるのだ。


めっちゃ便利。便利すぎて怖い。


これはフォルダ分けを手動でできそうだし、やり方が分かったら定期的に整理していくことにしよう。








あと炭は魔石だけ回収してすぐ捨てた。

魔石はなんとか残ってたよ。魔石強い。





町を出た後になって、「収納に私物とか入れておけばよかった」と気づいたけど、まぁ後の祭りだよね…


いいんだ、どうせ大したものは無かったし、金目の物が無くなってたらあの家族がうるさかったかもだし。




気を取り直して。

収納を確認したついでに、自分のステータスも改めて確認しておこう。







ラムダ

年齢:12歳  性別:男性

種族:人族   職業:なし


Lv:2

HP:851   MP:1985


筋力:D

俊敏:D

精神:D

体力:C

魔力:SS

器用:A

幸運:E


スキル:

【モノマネ】






うん、そうなんだ。 転生してもまだ無職なんだ……


いやね、今までは「男爵家子息」って表示されてたんだけど、縁切られちゃったからね。

ちゃんと反映されてるんだねぇ…対応早いわぁ。このステータスの表示管理って神様がしてんのかね?



ちなみにレベルは、何もしなくても12歳になった日から毎年誕生日に1ずつ、レベル10になるまで増えていく。

積極的に経験値を貯めなくても、早死にさえしなければ絶対に10まで上げれる仕組みだ。


スキルを貰える年齢と相まって、そういう理由でこの世界では12歳を成人に指定しているんだね。


そんなわけで、12歳になった私はレベルが2になっている。数日前までは1だったんだよねぇ。戦闘も生産も子供だからって実際にしてなかったし。



さっきのキックラビット戦が、何気に私の初戦闘だったわけだ。

案外戦えるものなんだな。兄たちの戦闘訓練風景を見ていたのも大きいかもしれない。



流石にキックラビット1匹でレベルは上がらないようだ。最弱魔物なだけあって、これと戦った際の経験値は雀の涙ほどらしい。

獲得経験値はゲーム的表現をするならマスクデータというやつで、どの魔物がどのくらいの経験値かとかは冒険者等の戦闘職による経験談なわけだけど。

せめて後7~8匹倒せば、辛うじて3には上がるかも?



MPが魔力SSの割に少なく見えるのは、単にレベルが低いからだ。


最初から多い人も居るし、ランクの割に少ないって人も居て、その辺は個人差になるけど、

基本的にMPはレベルアップで増量し、魔力のランクがそれに影響を受けるって感じ。


生まれつき高ランクなら良いけど、レベルを上げきった頃にようやくランクが上がったって人の場合、

MP増量に影響するのは次のレベルアップ時だし、レベルは上がれば上がるほど次のレベルまでの経験値が大量にいるしで、大変なんだそうだ。



まぁ、それは置いておいて。


「人間の平均レベルが30くらいって言ってたし、最低でもそのくらいは上げないとかなぁ…」


神様に言われた魔法ぶっぱ作戦も頑張らないとね。MPたくさん増やして、たくさん消費しないと。

魔術スキル無いから、初級をひたすら撃ち続けることになりそうだけど…うわぁ、地味に面倒げふんげふん。





余談だけど、HPが1000のはずなのに減ってるのは、長兄にボコられた分です。


自然治癒で少し回復してきてるけど、前世の私だと下手すれば死ぬって程度にはボコってくれましたからね。


実の弟相手やぞ。アイツ血も涙もないわ。


そういう意味では縁切れて本当に良かったと思う。















「う~~~ん…無いなぁ……」


兎炭事件から小一時間歩いているけど、良い感じの隠れ場所が見つからない。

街道ってのは見通しが良くないとダメだから、街道としてはむしろ評価すべき点なのだけど。


ついでにキックラビットも見つからない。次の町に着くまでに、収入が全くないのはつらいな…




「仕方ない、森に入るか…」



街道を外れた先にある森は、深く潜れば潜るほど強い魔物が居る。

入ってすぐのところでも、キックラビットより1段階強いゴブリンがよく徘徊しているし、なんなら奴らは群れで来るので、危険度が一気に上がるのだ。


でもこんなところでうだうだしてても、コスプレできないしなぁ…



え?人目を気にせず着替えればいいじゃないかって?


嫌だよ。完璧に着こなしている姿をオーディエンスに見てもらうなら兎も角、【中の人】が見えちゃうのは個人的にNGだから。





「まぁ、ゴブリンならなんとかなるだろ。火魔術を使わないように注意しないとだね」


キックラビットが瞬殺かつオーバーキルだったんだから、ゴブリンも初級魔法一発でいけるはず。


ゴブリンはあまり素材的価値はないけど、少しでも稼ぐために見つけたら積極的に狩っていこうかな。


何気に疲労も溜まってきてたし、早く落ち着ける場所を探さないとなぁ。



なんてのんきに考えながら、森の中へ足を踏み込んだ。













「んなぁぁぁぁぁっ!!?」



ガサササササッ



「ゲキャキャキャッ!ギェーッ!」

「ゲゲゲッ!ゲゲゲッ!」

「キャーッキャキャギャギャゲッ!ギャギャギャ!!」




ただいま絶賛追いかけっこ中の私ですこんにちは。


勿論私が追いかけられる方です。



いやぁ調子乗ってたね!多対一がこんなに大変だとは思わなかった!

あと森の中の視野の悪さも見くびってた!おかげでめっちゃピンチです!




ゴブリンの群れを見つけたところまでは良かったんだよ!

先にこっちが気づけたから先手を取れたしね。












森へ踏み込んで数分。早速、少し開けたところでゴブリン3匹が固まって座っているのを発見した。



「3匹か…これならいけるぞ……我が敵を包み込め!『アクアラップ』!!」


バシャァンッ!!


「ゲギャッ!?ガボッゴボボッ!?」


「よし、上手く捕らえたぞ!」




初級で使える水魔法は『ウォーターショット』と『アクアラップ』。


『アクアラップ』は相手を水で包み込んで捕縛し、顔ごと包めばそのまま窒息を狙えるという、初級にしてはエグイと言われている魔法だ。


『ウォーターショット』と違って継続型なため、発動中はずっと集中していなければならないんだけど、その分小規模なら複数の相手を一度に包むことができる範囲タイプ。

初級魔法なので威力は弱く、相手が暴れたら逃げられる可能性もあるけど、そこは私の高魔力で作られた魔法。

ゴブリン程度の力では抵抗しきれず、纏わりつく水の中でもがき苦しむのみ。



ゴブリン3匹ならこれで一網打尽にできるはずだった。






「ゲキャーッ!!」

「っつぁ!?いっ…な、なんで、まだ居たのか!?」



誤算だったのが、ゴブリンが3匹ではなく5匹だったこと。


目の前の3匹で全部だと思い込んでた私の背後から、2匹のゴブリンが襲い掛かってきた。

何かしら理由があって別行動をしてたんだろう。


ゴブリンの振り回した木の棒が、私の背中を強かに打ち付けた。





突然の痛みに驚きながら、2度目の攻撃は流石に避けれたけど、この時の衝撃でアクアラップに向けていた集中力は完全に霧散してしまった。


つまり、捕縛していた3匹のゴブリンも自由にしてしまったわけだ。








それからのゴブリンたちの反撃はすごかった。



こっちが1回攻撃する間、向こうは5回攻撃できるのだ。手数が違いすぎる。


それにこっちは攻撃するために呪文を唱えないといけないけど、その間に攻撃されたり邪魔が入ると、魔法が不発に終わってしまう。


3回に1回撃てれば良い方だった。




「ウインドカッター!! あ、ちくしょうまたハズレた!」



そして実際に撃った魔法も、森の木々に当たったりして結局無意味に終わる。


逃げながら、移動しながら戦うのが、こんなに大変だとは思わなかった。



「うわぁーん!もうやだあぁーー!」











1匹、また1匹と、ゴブリンが脱落していく。


魔法の威力自体は高いのだから、当てさえすれば倒せるのだ。当てさえすれば。




魔力の次に高いステータスが体力で本当に良かった。


なんとか5匹のゴブリンを倒し切るまで、私は逃げ続けることができた。




「いつつ…うぅー…顔も殴られた…最悪だ、青痣付きの顔でコスプレ楽しめるかなぁ…」


ゴブリンたちは遠慮なく木の棒で殴りかかってきやがったので、今まで見えない範囲で収まっていた怪我が、見える範囲までガッツリ広がってしまった。


ステータス表を見てないから現在のHPの詳細は分からないけど、前世の私なら軽くミンチになるレベルの負傷具合である。


HPが多くて本当に良かった……生きてるって素晴らしい…神様ありがとう…




自分を追いかけてくる気配が無くなり、それでも不安でしばらく周囲の様子を伺って、

もう何も居ないと確信を得たところでその場に膝から崩れ落ちてしまった。




逃げ惑ってる間に倒したゴブリンの死体を、探すのは難しいだろうなぁ…

つまり今回の成果は、最後に倒した目の前のゴブリンだけかぁ…


しかも、最後の最後で思わず放ったのが初級火魔法の『イグニッション』。

『ファイヤボール』と違って対象に触れるほどの距離で初めて発動する魔法なのだけど、まぁ実際に目の前に迫られてその恐怖で思わず使ってしまったのだ。


『イグニッション』は対象に着火して燃やす魔法。『ファイヤーボール』より攻撃力は下がるが、私の魔力の前では大差はなく。


何が言いたいかというと、目の前の収入候補も、例にもれず炭になっちゃってるんだよねぇ………


燃え広がらなかっただけ、マシと思うべきか……




あぁ…疲れた…色んな意味で疲れた……

もうなんにもしたくないってレベルで疲れた…


でも魔石だけでも素材は確保しとかなきゃ…あと隠れる場所も探さなきゃ……




おかしいなぁ、神様のおかげで魔力チートのはずなのに、現実はずっと厳しいや…

こんな調子で、ちゃんと神様のお願いを聞けるんだろうか…




「はぁぁ……早く、コスプレしたいなぁ…」


今はとりあえず、コスプレで癒されたい。ただそれだけだった。



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