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屍の冒険者  作者: 抹茶スライム
第一章
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第七話 豚の魔物③

 

 アルバの行った行動は実に単純であった。

 

 オークキングは正直一人では敵わないと感じたアルバは、野次馬と化していたオークを狙った。

 即ち、出口の確保である。

 

 

 「げ!こっちに来たブヒ!?」

 

 「お、王様!こっちブヒ!」

 

 傍観者となっていたオークらはオークキングに頼りっきりとなっていた。

 故に、唐突にこちら側に来られれば困惑するというもの。

 

 頼みのオークキングは、逃がすつもりなど毛頭ないので、取り巻きのオークに命令する。

 

 「そいつを逃がすなブヒィ!!」

 

 怒号に似た声でオークらに目的を与えたオークキング。

 目的を得たオークらは、戸惑うことを止め、その命令に従うべく動く。

 

 「行かせるかブヒ!」

 

 「今度こそ死ねブヒ!」

 

 その入り口はオークが三体横並びになっても余裕があるぐらい広い。

 そこから、四体のオークが一斉に飛び掛かってきた。

 

 内の二体の棍棒が迫るのが速い。アルバはそれを紙一重でかわす。

 しかし、やや遅れてもう二体の棍棒がきていた。

 

 「ぐッ!!」

 

 アルバは使えない左手を盾にして右手を守った。

 鈍い音が鳴るが、やはり死体故に激痛が走る程ではない。

 

 「喰らえ!!」

 

 アルバは剣を水平に振った。

 その軌道上には三体のオーク。

 

 「ぷぎゃっ!」

 

 「ぎぃっ!」

 

 短く悲鳴を叫ぶ二体のオーク。どうやら、二体だけは上手く殺せたようだが、一体はアルバのように腕で身を守ったようで片腕がなくなっている。

 

 「こ、このブヒ!!」

 

 仲間がやられたことと、このままでは逃げられてしまうことを危惧したオークが四体迫る。

 この四体をどうにかすれば逃げ道が開通するが、早くしなければ背後のオークキングが邪魔をしにくるだろう。

 

 アルバが迫りくる四体のオークを切り伏せようと構えた時、それは放たれた。

 

 「“石の礫”」

 

 それは唱えられた魔法名(・・・)の通り、大粒の石礫だ。

 ビュンと風切り音を出しながら真っ直ぐアルバの背中へと命中した。

 

 「ぐぁあっ!?」

 

 強い衝撃がアルバを襲う。

 何事かと後ろを見れば、こちらに掌を向けているオークキングの姿が見えた。

 

 「今ブヒ!!」

 

 アルバが見せた隙を逃さず、四体のオークが棍棒で殴り付けた。

 それらは全てアルバに命中し、確かなダメージを負わせた。

 

 

 「がッ…、くそ、なんで…魔法が使える…!?」

 

 アルバはオークキングが魔法を使えること理解できなかった。

 魔物の中には、オークやゴブリンといった魔法の適性がない種族もいる。

 

 故に、このオークキングが魔法を使用できることに疑問が浮かぶ。

 

 「ブゴブゴブゴ!それはこの僕がぁ、オークキングだからにぃ決まっているだろブヒ!」

 

 明らかにオークキングが言ったことは理由になっていなかった。

 しかし実は本質は捉えており、このオークキングは、オークからの進化の際たまたま“魔法適性”を得ていたのだ。

 他のオークキングは本来魔法が“不得手”である。

 

 「意味わかんねぇよ…!」

 

 アルバは全身に力を込め立ち上がろうとするが、周囲のゴブリンが棍棒でそれを許さない。

 

 そのまま殴られ続けたアルバは、ついにオークキングの接近を許してしまった。

 

 「これでぇ…終わりブヒィ!!」

 

 再び、頭の方に手を振り上げるオークキング。

 どうやら、止めはあの拳でするようだ。

 

 (くそ…ッ!!俺はここで終わりなのか…!?)

 

 アルバは最後の抵抗として剣を盾にする。

 

 そして、直後に聞こえたのは、肉や骨が砕け潰れた音であった。

 

 

 

 

 「…また、邪魔ブヒねぇ…」

 

 オークキングがそう呟いた。

 

 アルバは未だに自分が死んでいないことに気付くと、現状況を確かめるべく視線を転じた。

 

 

 「なっ…!?」

 

 アルバが捉えた視線の先には、オークキングがこちらではなく、真横に拳を突きだしていた姿だ。

 そして、その拳にはびっしりと血肉がこびりついている。

 

 

 新鮮な血の香りが鼻腔をくすぐる。

 邪な考えがよぎる中、アルバはしっかりとその犠牲となってしまったそれを見た。

 

 

 それは首から下は正しい形としては見当たらない。だが頭部だけは辛うじて残っていた。

 そしてその顔には見覚えがある。

 

 緑色の肌、尖った耳に鍵鼻。

 

 

 「…お前は…ウザイの」

 

 それはとてもウザイの顔立ちに似ていた。

 

 「…どうして」

 

 アルバに向けられた攻撃を庇おうとしたのであろうか、いつの間にか気絶から立ち直っていたであろうウザイの妹が、そこにいた。

 

 だがその死に顔は、恐怖に駆られた表情というよりは、何かを救おうとした覚悟ある表情であった。

 

 

 「くそッ、くそッ!!」

 

 アルバは悔しさから地面を殴った。

 

 守ると決めた存在が自分のせいで死んでしまったのだ、これ以上の後悔がないかと思われたが、アルバの中にはそれだけじゃない、特異な感情に向けた怒りを覚えていた。

 

 胃がぎゅうと締め付けられる感覚がする。鼻は血の臭いを捉えて離さず、瞳は散らばった血肉を探している。

 

 「なんで、俺はこんなときに…ッ!」

 

 口から零れそうな程に唾液が出る。

 アルバに起きた異常、それらが意味することとは、

 

 「腹が空くんだ…ッ!!?」

 

 アルバは、自分のために死んでくれたゴブリンを命の恩人だけでなく、ご馳走としても見てしまっていた。

 

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