08 人間恐怖症
短めのが続きます。
僕が一人になって3日が経った。食べ物は木の実とかを食べて飢えをしのいでいるから大丈夫だけれど。いっこうに川とかの水源が見つからないため、身体を洗えない。元日本人の精神を持つ僕にとってはかなり精神的にきつい。
・・・ということで、3日間ずっと水だけを探していた。そのせいで、今僕がどこにいるのかリアの記憶でも解らなくなった・・・
「・・・誰かに会えないかなぁ・・・」
寂しくて声に出すけれど・・・3日間のうちに生物にあったのは一回も無い。魔物もいなかったのでそこは助かるけれど・・・
「しょうがない・・・まっすぐ行けばどこかたどり着くかなぁ・・・」
森は直線に進むのが難しいらしいが、リアはハイ・エルフ(?)らしくて、森で迷うことはない・・・迷ってるけど!
「人間のでもいいから街道とかに出れば良いんだけれどなぁ・・・」
進む方向は本能的に森の出口の方向だけは分かるので、一応森を出ることはできる・・・けれど、森から出るとかなり僕は弱体化しちゃうんだよなぁ・・・
森で勝手がきくっていうのは僕等の種族特性だから・・・外に出ると魔法以外は頼りにならないんだよね・・・誰かかくまってくれないかな・・・
「・・・服、着替えたい・・・」
・・・他の人格の記憶が入ってるのって大変・・・
ーーーそれから2日かかってやっと森を出ることができた・・・けど!
「なんでどでかい草原なのおぉぉ!」
一応石畳の街道はあるみたい・・・だけど、こんなに広い草原に延々と道が続いていると・・・気力削げるなぁ・・・
「どちらに進むか・・・右でいいや」
この選択が、リアの命を助けることになる。森から見て左がスティル帝国・・・つまり、リアの住んでいた村を襲撃した国なのだから。
スティル帝国は人族至高主義の国である。そして帝国が主張する領土範囲内に異種族の集落や街が存在するとわかった場合は直ぐにそこを襲撃をするという徹底ぶりを見せている。
リアの住んでいた村は、帝国のどの主要都市からも離れていた。尚且つ、住人の数が少なかったため、帝国は徴税官の派遣を怠っていた。そのおかげか、帝国にハイ・エルフの村だということを知られることはなかった。
だが、帝国の財務大臣が変わり、新しい財務大臣が税の徴収を徹底した為、リア一家の村のことが明るみになった。そして、調査の為に特殊な商人を送り込んだ結果、ハイ・エルフの集落だったと判明したのだ。
ーーー街道を進み始めて一週間
「・・・おっきな壁だ。」
そう、巨大な壁に囲まれている街・・・都市が見えてきたのだ。
リアがたどり着いたのはエルゼル王国の国境近くにある城塞都市である『セントラル』だ。
政治面では仲が悪いスティル帝国とエルゼル王国は貿易面ではかなり影響しあっている。そして、その貿易を行う商人達の拠点が、セントラルなのだ。
「・・・中、入れるのかな・・・?」
壁にある入り口(?)にはかなり長い行列が出来ていた。
「並ぼっか・・・絡まれませんように・・・」
ということで、僕は行列の最後尾に並ぶことにした。
周りの商人(多分)達はチラッと僕を見たあと、哀しそうな視線を僕に送ってから目をそらした。・・・何で? そんなにかわいそうな格好してないよね? 痩せているわけでも無いし・・・本当になんでだろ。まあ、いいや。
幸い絡まれることなく、門番の人のところまでたどり着けた。って、入門税とかあるのかな!? お金、持ってない・・・ないことを祈r「入門税銀貨1枚お願いします」・・・ダメでした。
「ぐぅ・・・あの、お金ないんですけど、外で稼ぐ方法とか無いですか・・・?」
稼ぐしか・・・無いだろうね。でも、僕みたいなちっちゃいのだとなぁ。
「うーん・・・」
門番さんは親切そうな人で、ちゃんと一応考えてくれている・・・けれど、そんな都合の良い仕事は・・・「君、計算って出来るかい?」
「ふぇっ!?・・・はい、出来ますけど」
「じゃあ、ちょっとついてきて。頼みたいことがあるんだ」
「は、はい・・・わかりました!」
何だか声をかけられた時に少しぞくっとしたけど・・・気の所為だよね?
門番さんは一緒にいた人と少し話してから、僕を門のすぐそばにある建物に連れて行った。
「じゃあ、ここにメモがあるでしょ。ここに書いてある数全てを足し算して、この書類のここに書いておいてくれるかい? 終わったら僕のところにまたおいで。そしたら仮の身分証を発行してあげるよ」
「わ、分かりました!」
僕が了承すると、一瞬悲しそうな顔になって、何か呟いた後、直ぐに元の表情に戻って、門の方に向かって行った。
「さて、計算かぁ。久しぶりだなぁ・・・えーと?・・・これは多分入門者数の報告書かな?」
計算は小学2年生レベルの難易度だったから直ぐに終わるけど、如何せん数が多いので、結構大変だった。全て終わらせるのに30分程かかってしまった。
早速、門番さんのところへ向かう。
「おじさん! 終わりましたー!」
「・・・うん、ありがとう」
何故か微妙な顔をしたけど、直ぐ表情を戻してお礼を言ってくれた。
「じゃあ、仮の身分証を発行するから、こっちへおいで」
「はい!」
今度はさっきとは違う建物に向かった。その中の小さな部屋に入ると、ガラス玉? 水晶玉? みたいなものと小さめの箱? と椅子が二つだけ置いてあった。
「じゃあ、この水晶玉に手をおいて、魔力を流してくれるかい?」
「はーい」
魔力はほんの少ししか流さないことにした。なんとなく壊れそうだから・・・
「はい、じゃあ少し待ってね。今作るから」
少しすると、小さめの箱の中から金属のカードっぽいものが出てきた。
「はい、これが仮身分証だよ。1ヶ月の間は普通に使えるけれど、1ヶ月経つと更新しないといけないからまたここにおいで。今度はお金はいらないけど・・・結局は宿代とかは稼がないといけないから、頑張ってね」
「分かりました!」
僕がカードを眺めていると、「こんなに小さいのに」とつぶやいたのが聞こえたけど、まあ、何か獣とかを狩れば売れるだろうし。何処にいるかは知らないけれど・・・
「ふむ・・・君はエルフなのか?」
「え? あ、はい、そうですけど」
「じゃあ、これを羽織って行くといい。顔も隠せるから、人攫いにあう確率も少しは減るだろうし」
「は、はい。分かりました」
人攫いいるのかよ! 気を付けないと・・・
それと、見た目だけじゃハイ・エルフとエルフの見分けはしにくいみたいだな。
「じゃあ、がんばってね」
そう言っておじさんは僕の肩に手を置いた、その瞬間。
全身が震えた。
「きゃあぁっ!!」
思わず悲鳴をあげて飛び退いてしまった。
体がまだ震える。というか、うまく力が入らない。
「ど、どうしたんだい?」
「っ!・・・い、いえ、ありがとうございましたっ!」
そうして僕は逃げるように街に入って行った。
「これって・・・人間恐怖症・・・?」
でも、喋るのはなんともなかったはず・・・
「よく・・・わからない」
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評価、感想まってます!
新作「能力管理部の高校生活」の連載を開始しました。
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話数無いですけど、読んでいただければ幸いです。