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◯ンタッキーから始まる非日常  作者: 雪狐@ちょいがんばる
5/12

2月8日(曇り)

少しながめ

続いた。


 夕方に帰宅すると玄関先で玉枝が仁王立ちしていた。

 そっと締めてきた道を……戻れない。


 「なんだ!何を企んでいる!」


 がっしり肩を掴まれている。

 異様にキラキラした笑顔が可愛いやら怖いやらで複雑すぎる。


 「デート!デートに行こうじゃないか」


 「急にどうしたんだ、いきなりデートを何故!?」


 デートとか突然恋人らしい事を言われると動揺がやばい。


 「テレビで特集をやっていて、散歩しながら食べ歩きデートが最近の流行りだと言ってたから」


 玉枝は尻尾をゆったり振りながらはにかんでいる。


 「それは、飯を食べたいだけでは? 」


 「えへへ」


 素直か!いや先に釘を打っておこう。

 上限を決めないと際限無く買い食いされる気がする。


 「玉枝、上限は5千円な。それ以上は生活が厳しいから無理」


 少し情けないが、それも仕方ない。

 甲斐性より実生活だ。というか玉枝分の食費出してるから許せ。


 「そんなに使って良いのかい? じゃぁ早速行こうじゃないか」


 「お、おい」


 腕を引かれ、俺は商店街へと連れ出された。


 夕暮れ商店街は近場にある買い物場所で、うちのアパートからするとスーパーより近く、かつ住宅街に近いのでそこそこの賑わいを見せている。

 時折行われる500円市と呼ばれる、大安売りイベントになるとそれはもうお祭り騒ぎだ。

 

 夕方の奥さま達への呼び掛けや安売り文句を聞きながら、のんびりぶらついている。


 手を繋いでだが!!

 

 手を繋いで歩くことがこんなに恥ずかしかったとは!

 嬉しいけど見られてる気がするし、なんか手汗もやばい。


 涼しい顔で玉枝が歩いてるのが信じられない。


 「ゆき、あそこはこの前メンチカツをオマケしてくれたんだ、ちょっと寄っていこう」


 恰幅の良いおばちゃんが看板娘の肉屋を、指差し歩いていく。


 「あら、玉枝ちゃん今日は男連れかい? 」


 フレンドリーなおばさんだ。

 お店の肉の種類は思ったより豊富で、ダチョウという値札が気になってしょうがない。

 店の奥の方ではフライヤーが揚げ物の良い音をあげていた。


 「彼氏なんだおばちゃん」

 「おや、玉枝ちゃんにしては冴えない子だね、意外だよ」


 おっと、このばばぁ初対面でいいおる。


 「でしょう?でも優しくて面白い人なんだ」

 「だろうね。人のよさそうなのは、ウチのとそっくりだ」


 あはははと豪快に笑い、玉枝がもつられて笑っていた。

 

 誉められたのか?


 「彼氏ちゃんと玉枝ちゃんに、おみあげだ二人でまた来るんだよ?若い子の元気を吸えなくなるからね」


 吸血鬼か!と突っ込みを入れたら、面白い男だと更に豪快に笑い、ソースの香りのする熱々のカツが手渡された。


 「うちの看板だからさ、歩いて食べて宣伝するんだよ」


 肉屋を後にして食べ歩きながら練り歩く。

 

 「美味しいね、ゆき。あそこは最初に仲良くなったお店なんだ」

 「ここらでこんなに美味しい、メンチカツがあるなんてなぁ」


 ただでくれたし。


 にこにこしている玉枝がサクリと一口メンチカツ食べる。

 

 俺一人ならこんな店に寄ることもなかった。

 玉枝には数日ではあるがお世話になっているのに、お礼を言っただろうか?


 「玉枝、今日はありがとう」


 ぼそりと溢した一言をあざとく聞き付け、帰るまでに6件ほど同様なお店を紹介されたうえに彼氏なんだ宣言もされた。


 外堀から埋められている? いや流石に関係ないか。


 帰り道。


 お腹一杯の幸せそうな玉枝をみていると、俺の後ろで心もフワフワするような感覚がしてくるから不思議だ。


 明日もまた歩きに来るのも良いかもしれない。

続く?

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