表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◯ンタッキーから始まる非日常  作者: 雪狐@ちょいがんばる
1/12

トビラ

 

 冷え込みが、耳を氷嚢へと変えてしまう夜更け。

 何時もの見慣れた住宅街の通勤路で自転車と僕が宙を舞っていた。


 正月が過ぎ、世間の浮かれた空気が抜け、社会と受験と物理的な寒さが襲ってくる季節。

 せっかくのケンタッキ◯が美女の頭部に熱いキスをしようとしているのは、きっと俺が一瞬浮かれたのが原因だろう。

 

 こんな寒空の下で宙を舞っている、アルバイター霜原ゆきとケンタッ◯ーの数分前。


 ■□■□■□


 「今日は余り物出たし、晩飯代浮いたぜーひゃっほぉー」


 近所迷惑な奇声を発しながら、愛車の全手動二輪車を軽快に漕ぎ借家を目指す。

 3ピースにクリスプ、ビスケットというデザートまでついた豪勢な夕食だ、テンションが上がらないわけがなかった。


 住宅街の一角古びた神社の前は人通りは無く、全手動二輪は俺の立ち漕ぎターボも加わり徒歩の3倍位のスピードが出ていた。

 何時もなら、そう、何時もなら誰もいないはずだったのだ。


 今日限って、目の前には黒髪クールビューティーが飛び出してきてしまっていた。


 「アッ」


 叫ぶ間もなくハンドルを切り、俺は宙に放り出され。愛車は壁にダイブした。

 黒髪美女をちらりと見れば、頭部上空にあの箱が見える、油まみれコース確定ルートだ!


■□■□■□


 回想おわり!


 ケ◯タッキーよソレは不味い、クソッタレ。ファッチキン。


 捏ねられたハンバーグ位に全身を強打し、のたうち回ること数分。やっと痛みが引いたところで、さっきまで愛車の前かごから漂ってきた良い薫りが、道一杯に広がっていた。


 柔らかそうな唇に油が付いてつやつやと輝き、足元の箱に奇跡だとしか思えないが、上品かつ丁寧に乗った気品溢れる骨、ビスケットにメープルシロップをかけている美女が居る。 


 (すごい、こんな美人が俺の晩飯を食べている)

 

 「君、これ良い臭いがしてたけどスッゴい美味しいね」


 「美味しいね。じゃねーんだよこのヤロウ!ふざけんなよ!おまえ、まじふざけんなよ、なぁこのヤロウ、なぁ」


 「君、語彙少ないね?って謂われないかい?」


 不思議そうに黒髪美女が、俺を煽ってくる。


 「うるせーわ、んなことはどうでも良いんだよ!なぁコノヤロウ」


 「わざとやってるのかい?可愛いね」


 「ち、ちげーよ……」


 美女に面と向かって微笑みながら可愛いとか言われたら、どう返して良いか分からん。


 「君面白い!ご飯も貰えたし、君私と付き合わないか?」


 ちなみに拒否権はない。と笑ってないけど笑ってる能面顔で脅してくる。


 やべぇぞこいつは。俺の本能が警鐘を打ち鳴らし放題だった。


 「それは差し上げるんで、どうぞ。じゃぁ僕は急いでますんで」


 「おいおい、連れないなぁ。《名を名乗れ》少年? 」


 「霜原ゆき、20歳。彼女無し、童貞、アルバイター、趣味は全手動二輪で町の美味しいもの巡り」


 勝手にすらすらと言葉が出てくる。というかヤメロォォ!


 「・・・・・・」


 何でいたたまれない表情をされなきゃいけないんだ。クソッタレ。

 憐れみの目で観ないでくれ、頭を撫でられてもうれしk……嬉しいけど……そうじゃないんだ。


 「年上だけど、本当に君が良ければ付き合うぞ?」

 ただし。

 「ご飯食べさせてくれない?」


 いきなり紐宣言とかやばくないですかね?


 「紐は嫌です」


 キッパリ告げると黒髪美女が顎に手をあて考え始める。

 こんな何気ない仕草も様になっていて、見惚れているとにんまりという表情がぴったりの顔を上げた。


 「稼げばオッケーという事でいいのか?」

 「まぁ、貴方がよければ俺は……」

 「じゃぁ決まりだ、本日今よりソナタは我が社だ!」


 ひょっこりと耳と尻尾が現れる。

 

 もう意識は向こう岸に全力でぶん投げた後だった。


 

続く?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ