まーた 自称未来から来た者かよ
王道、邪道を通り越して達観しきった信長が出てきます。
ネタな信長が許せない人は、戻るのをお勧めします。
誤字脱字、日本語おかしい注意
感想くれるとありがたいでです。
「あれ… 俺こんなところで何してるんだ?」
眼の前には田畑が広がっている。
都会にはない場違いな風景… ここは何処か?
「さっきまで俺はコンビニにいたよな?」
確かジャンプの立ち読みをしていて…… 思い出した。
そこに車が急に突っ込んできたんだ。
「てことは…… 俺、死んだのか」
手や足、スマホの内カメラで、顔を写したりして見るがいたっていつもと変わっていない。
服装だって持ち物だって今までのままだ。
ああ、明日部活があるのにな……
こんなところで落ち込んでいてもしょうがない。取り敢えず周りを散策してみるか……
都会生まれ、都会育ちの俺にはテレビでしか見た事がない、日本古来の姿。
ここが天国であってくれることを祈る。
天界の住人なのだろうか…… 人々は珍しいものでも見るようにこちらを見て来る。
通りすがりの人は俺が目を合わせようとしたら不自然に目を反らす。
正直この場に居づらい……
道を聞こうにも天界の住民は話しすら聞いてくれず、石を投げられたこともあった。
「よくあんな野蛮な人間が天国に来れたな」
突如村から雄たけびのような声がする。馬の走るような音も聞こえてくる。
「おいおい、年貢を納めなかった村はこの村か? お役人に許可は取ってきてんだよ、この森長可がきても払えねえってんなら村丸々一つで払って貰おうじゃないか」
数十名の馬に乗った武士たちが村目掛けて駆けて来る。
所々で配下? と思われる武士たちが家々に勝手に押し入り、米俵のような物を勝手に持って行っている。
村人共は、悲鳴を挙げ。地に伏せるばかりだ。
「なんだぁ、お前。俺達への礼儀がなっていないなぁ」
ああ…… これはタイムスリップって奴だ、ここは天国なんかじゃねぇ、昔の日本だ。
お百姓のように地に伏していなかったので俺に刀が振るわれ……
「やめんか、馬鹿者」
こいつ等の総領と思わしき男が……
あれっ何で此奴仲間を斬っているんだ。 それに血が… 首が…
「初めて見たな、これが殿の言う…… 」
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ここは何処だ。うっ、手が動かない。気がついたら、俺は牢屋のようなところで縛られていた…
あれからどれだけ時間が経ったのだろう。
服も違う。 荷物もない。
それにここはいつの時代だ? 鎌倉か? 戦国か? はたまた江戸か?
今日ほど真面目に歴史を勉強してればよかったと後悔した日は無い。
目が覚めてから結構な時間が過ぎた。
「出ろ」
図体がでかく、鬼のように怖い顔をした黒人が、乱暴に俺を牢屋から引きずり出す。
ああ、今度こそ死ぬのか…… もはや抵抗する気力すら湧いてこない。
「お前はいつの時代から来た?」
目の前の大男の問いかけに体が固まった。
「平成」
掠れたような声で呟いた。
「平成? まーた俺の知らない時代からの来訪者だな」
頭が上手く回らない。
「ここは何処なのです? それに貴方は?」
「ここは戦国さ、少年。俺は昭和から来たが殿に拾われて弥助として生きている」
昭和… もうかなり昔の話だ。
この鬼のような形相の男も、この時代からすれば未来人なのか…
「織田領にタイムスリップ出来て運が良かったな少年、俺なんて日本で働いていたのに海外にスリップしちまったから、酷い目に遭ったぜ。じゃあ俺はここまでだ、精々頑張れよ」
男は俺をとある一室に投げ込んだ。
「このような酷い仕打ちをしてしまい申し訳ないお客人」
部屋にいた男のような女のような中性的な顔立ちをした人間が俺の縄を解いた。
「やっと殿との謁見の時間を作る事が出来たので、こちらにお着換えください」
そこに和服や袴を置かれても…
「申し訳ない、お客人。そー言えば貴方方のような人間はこーゆのはあまり着ないらしいな。着させてあげるから、その服をお脱ぎくだされ」
———童貞の俺には服を着るのに一悶着あった。
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殿のおーなーりー
太鼓やなにやらが聞こえる中、俺はさっきの人に口酸っぱく教えられた作法通りの頭の下げ方をする。
コツン コツン
部屋中に響き渡るブーツの音… あれ、なんで。気になるが顔を上げられない。
「表を上げよ」
ブーツの主が力強い声でそう言った、と共に周りの従者たちが皆外に退出していった。
「余は織田信長である。其方の持っていた物を見て遥か彼方未来からの人間だということが手に取るように分かる。で、其方は何時からきて名を何と申す」
目の前の教科書に載るような歴史上の人物が目の前にいる…
「平成出身の田中連であります」
「ほー平成からか、平成何年からこちらに来た? あとその堅苦しいの止めていいぞ。お主らが礼儀知らずなのくらい知っているし」
目の前の信長は悪戯をする子供のような笑みを浮かべている。
「平成28年の8月1日から来ました」
「ほう平成28年からか、それでもうポケモンゴーは解禁されたのか? そうそう去年きたな史学科の大学生とやらがな武田信玄死ぬっ、つたんだわー、そしたらほんとに武田信玄死んじゃったんだわー、ビビッて損した~。でなその大学生がなポケモン廃人だとか名乗っていて、3DSでポケモンをやらせてもらったんだわー、あれめっちゃ楽しいな。でその大学生から聞いた話なのだがスマホ越しにポケモンを捕まえられるアプリが開発中だとか? それはもう完成したのか?」
目の前の信長はそれはそれは未来人慣れしたご様子でした。
「はぁ、ポケモンGOはもう解禁されましたよ」
興味津々ないい大人の信長様は俺のバックからスマホを取り出し、俺に手渡した。
スマホを取り出し、パスコードを解除し、アプリを起動する。
ロード中です…… エラーコード~ インターネットに接続してください。
「ああ、ワイファイが飛んでないとできないのか、ああ未来人が儂の城にワイファイ工事してくれないかな…」
子供のようにスマホの画面を覗きこんでいた信長はものすごくおちこんでいる。
「信長様、一つ質問があります」
「なんじゃ? 申してみよ」
「一体何人の未来人とお会いになったのですか」
信長は上座に戻り語り始めた。
「そうだなーあれは平手の爺やが生きている頃だった。当時の儂はやんちゃでな、珍妙な格好をしたものがいてそいつにちょっかいを出したら、未来人だというんだ。で、その未来人が儂が天下取るとか言い始めちゃったわけさ、でもその当時は全然信用してなかったけど、便利な道具を沢山持っていたから遊び相手として面白がってた訳さ。ああ、ライターとかは便利であった。あれはまたほしい代物じゃ」
多分これは子供の頃の話だろう。
「で、その未来人梁田って言ってさ元服しても面白かったから使っていた訳なん、でそいつがあった時から今川が来る、今川が来る、散々言っててね。ほんとに攻めてきちゃったの。でもね、なんかそいつ急にドヤ顔になって桶狭間に奇襲すれば勝てるとか言い出して、籠城しても負ける事が目に見えてたから、玉砕覚悟で突撃したの、そしたらほんとに桶狭間に義元いて勝っちゃったの。それからだな、珍妙な格好をしている自称未来人を信用するようになったのは」
梁田? 誰だよそいつ…… だがそいつのお陰で歴史は狂わなかったのか?
「梁田さんはどうなったのですか?」
「ああ、あいつは急にいなくなった… 自分のいた時代に帰ったのであろうか」
目の前の信長は急に悲しい顔をした。
「あと、ついでに言っとくと、明智が裏切りますよとか、ドヤ顔で言わんでくれよ。もう知っとるから、天正十年に本能寺で起こるんじゃろ。それまであの金柑使い倒して、天正九年あたりから領地奪い倒してポイしてやる」
ああ、これ歴史変わるんじゃねぇの。
「長篠もじゃぞ、兎に角鉄砲沢山使うんだろ? 確か前の前くらいが三段打ちがどうとか言ってたな。それ以外で知ってることはないのか?」
「歴史に疎いもので特には…」
「ほーそうか、でお主どうやってこの時代に来たか分かるか? なんかさー昔いたんだよ、自分の意志でここに来ましたとか言ってる奴が、なんか腕時計みたいなものでここに来たらしいんだが」
それって、俺よりも未来の時代の未来人なのでは。
「いえ、車にぶつかって突然この時代に飛ばされて…」
「ああトラックにはねられたって奴か、異世界ものの王道だな。ここに来た奴の半分以上がそういっている」
まーただの車なんだがそーゆことにしておこう。
「じゃあ現代での儂の評価はどんな感じなんだ。大河ドラマとやらではまた主役を飾れることが出来たのか?」
目を輝かせながら信長は問いかけて来る。 大河ドラマ? なもん見てねぇよ、ああでも確か…
「今年は真田幸村が主役の大河でしたよ」
「ああまたそいつか、なんか未来人がよく言ってるな。真田幸村がどうとか、伊達政宗がどうとか。カップリングがどうとか」
そういいながら信長は戸棚のようなところから健全な男子が見ると失心してしまいそうな、腐がつきそうな本をめえいっぱい広げた。
「儂のコレクションじゃ、なんじゃその態度。未来ではこれが流行りではないのか?」
首を横に振った。
「だましたなあの女…… 次こちらに来たら鋸引きじゃ」
そういうと信長はその本をしまい、今度は同人と呼ばれる種の本を沢山持ってきた。
「コミケとやらはまだ続いておるのか。現代では儂を女の姿で書くのが流行っているそうだが」
「信長様…… それは?」
「ああこれか、京に上洛したばっかりのころに出会った。オタクと名乗る民族のコミケと呼ばれる祭典帰りにトラックにひかれてこちらに来た未来人から貰ったものじゃ。人にはみせれんが儂の家宝じゃ」
そういって信長は大口を開けて笑った。よく見たら戸棚のようなところにはライトノベルらしきものや漫画らしきものまで置かれている。
「お主スマホ以外には何か持ってきておらんのか?」
バッグを漁り始めたが、中からは財布しか出てこない。
そりゃそうだ、あの日俺は友達とカラオケに行く約束をしていて早く着き過ぎてしまったためコンビニで暇つぶしの立ち読みをしていただけなのだから。
「お主銃とか、機関銃とか持ってないの? この本では学生が戦車に乗っているぞ。未来の世界では学生が大人より強くて銃もって無双するのが当たり前ではないのか?去年の奴が持ってきた本にそう書いてあったぞ」
いやいや何処で得た知識だよ。
「お主、本当に何も知らないんだな。何か儂を楽しませることはできないのか。あれみせてくれよサッカーとやらのリフティングを二〇〇回的な」
悪いがバスケ部なのだよ… 首を横に振る事しか出来なかった。
「そうか…」
信長の声音が変わった。
「外に出よう、お主は先に行っててくれ」
御仕えの者が戻ってきて信長は刀を手に取り支度を開始した。
部屋を出た瞬間…
景色が急に動いた… ジェットコースターに乗って落下した……
「死体が光っておる。蘭よみたか、やはりあの本の通りだった。未来人は死ぬともといた時代に帰れるんだな」
最期に聞いたのは馬鹿みたいにはしゃぐ信長の声だった。 ああこれは夢だ…
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気がついたら病院らしきところで俺は寝ていた。
眩しい… 良かった、やはりあれは夢だったのか…
次の日俺は家族からコンビニでの事故の様子をしった。
「あれぇ? 母さん俺のバッグはどこにいったの?」
母は口ごもった。
「それが探したのだけれどもどこにも無かったのよ……」
首下に急に寒気を感じた。
「教科書持ってきて歴史の…… いいら早く」
母は夏休みの課題でもやるのかと勘違いして教科書以外にも余計なものを持ってきていた。
一五八二年 本能寺の変、織田信長は家臣の明智光秀の謀反により自害する。
それでも歴史は変わる事は無かった。