二年参り
「ねぇ大晦日、お参りに行かない?」
そう誘われたときにはびっくりしたものだ。
でも、特に予定があるわけでもなく、いつもと違うことがしてみたいということもあって、俺は彼女と行くことにした。
待ち合わせは手野駅。
中央改札口の改札を出たところで待っていると、彼女が構内からゆっくりと歩いてきた。
「待った?」
「いや、今来たところだから大丈夫」
取り出してしばらくたっていた携帯電話をポケットにしまう。
「じゃあ行こうか」
手野八幡神社というところに行く予定だ。
何がどうという御利益が欲しいというわけではなく、ただ彼女とお参りするのに、待ち合わせ場所やらなんやらかんやらを考えて、そこに行くことにしたわけだ。
そこそこ大きくて、そこそこ人が集まるところだ。
「じゃあ早速行こうか」
彼女がぐいぐいと引っ張っていく。
「初詣じゃないのか」
「二年参りってやつだよ。お母さんの置か亞s何、私から見ておばあちゃんが小さいころからずっとしてるらしいの」
彼女の話によれば、除夜の鐘をきいてお参りしてからいったん帰り、それからもう一度お参りをするということらしい。
「ここから家に帰ったら、初詣するのに時間かかっちゃうから、きょうはそのあたりは省略かな」
彼女が話しながら、手をつなぎつつ歩いていく。
ちらつく雪と、しっかりと見える白い息と、ゆっくりと流れる時間とともに、俺らは歩いていく。
手野八幡神社は、手野駅から歩いて10分とかからないところにあった。
境内は3段ほどの階段があり、それを昇って大きな鳥居をくぐる。
この鳥居はなにか石ではなくて金属のような光沢がある。
石畳になっているところをさえつつ歩いていると、手水場があった。
「冷たいけれど、しておこうか」
「わかった」
昔は全身河に使ってしていたそうだけど、今は手を注ぎ、口を洗うぐらいだ。
それをすませると2つ目の鳥居がある。
2つ目の鳥居は、しっかりと頑丈な石でできている。
2008年に起こった北大阪地震でも、動くことはなかったそうだ。
鳥居をくぐると、いよいよ拝殿がある。
そこで今年一年の感謝を2礼2拍手の後にすると、彼女とともにいったん境内外へと出る。
手野鉄道は、今年も終夜運転をしているようで、遠くから電車の音が聞こえてくる。
「気持ちいいねー」
彼女が歩道を歩きながら俺に言ってくる。
近くにあったコンビニに立ち寄り、そこで肉まんを食べる。
しつつも、時間を確認する。
「もうそろそろ行くか」
「二度目の参拝だね」
そういって彼女はもたれていた壁から、よっと声をあげて離れた。
「雪、いつの間にか止んだね」
彼女は空を見上げて話す。
そうだ、気づけば雪はやんでいた。
それに気づかないほど、彼女と一緒にいたということだろう。
二度目のお参りは、初詣の参拝者と重なったため、すごく待つことになった。
途中、誰かが聞いているラジオが、テレビで年越ししたことを告げた。
「あけましておめでとう。今年も、いろいろとよろしく。な」
俺が彼女に言うと、彼女も笑って俺に言った。
「あけましておめでとう。私こそ、よろしくね」