第5話 避けられないモノ
第5話
午後六時。
すでに白百合中の昇降口には肝試しに参加する全員が揃っていた。まるで部活の遠征のようだ。
「ようこそ!白百合中へ!」白百合中の生徒と思われる数人の女子達が俺達を歓迎する。
彼女達は全員夏樹由美と友達らしく、久々の再会を喜びあっていた。たった二ヶ月間会わなかっただけなのに…おめでたいものだ。
数分後、白百合中の人達から肝試しのルールを説明される。
どうやら…①二時間以内に②校舎内のどこかにあるアイテムをゲットして③帰還すればクリアなようだ。開始時刻は午後六時半。二人組を作り、協力してクリアを目指す。ペアはクジで決めるそうだ。
夏樹由美のペアになりたがる人多いだろうな…
…星水さんから手作り感満載のくじ箱を受け取る。中にある紙をとると、そこには「604」と書いてあった。ホテルの部屋番号みたいに書くなよ…
「あ!狭山君も604だね!」星水さんが俺の紙を見ながらそう言う。
「も?てことは…」
「うん!私もだよ!」星水さんも「604」と書かれた紙を見せてきた。どうやら俺のペアは星水さんのようだ。
「よろしく、星水さん。」
「うん、こっちこそよろしくね!」
次々に皆がクジをひいていく。参加者は俺を含め18名。計算では9ペアできるはずである。
予想どおり、男子の目当ては夏樹由美の番号だった。
現在クジをひいたのは俺を含め10名。夏樹由美は、まだひいてない。
続々とペアが決まっていき、その度に男子勢からは溜め息と安堵の声が上がる。
…ついに夏樹由美が引く順番になった。
現在残ったクジは4枚。すでにどの番号も1人は出ているため、ペアが決まってないのも4人である。
その中の1人には、湯川も含まれていた。
4人が必死に祈る中、俺も密かに祈っていた。
湯川がペアになれば、夏樹由美と離れたくないだろう。ならば俺と戦うより夏樹由美と一緒にいる事を選択するはずだ……
夏樹由美はクジをゆっくりと、ゆっくりと引き、とった紙を高々と掲げた。
「私の番号は…これよ!」
その紙には、「609」という数字だけが書かれていた。
湯川は?湯川はどうなった⁉︎
すぐに湯川の方を向く。湯川は…しゃがみこみ、頭を抱えてうめき声を発していた。足元に落ちている紙には、「606」という数字が書いてある。
これで…決まった。湯川と俺の衝突は、もう避けられない。
申し訳ございません。
1週空けた割に少ないです…