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レジスト×アセプト  作者: 新井分
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第4話 「もういいわ」

第4話

のどかな田園風景から、派手な街の風景に変わっていく…俺は一人、電車に乗っていた。

隣の県ってだけでこんなにも違うのか…


ファミレスでのいざこざから三日が経過した。今日の「肝試し」の準備に土日を費やし、準備を整えた。殴りかかろうとした湯川のことだ、パンチでアゴやみぞおちを狙ってくるだろう。

肝試しをする場所も昨日の夜に判明した。隣の県にある、白百合中という夏樹由美が光琳中にくる前に通ってた学校だそうだ。隣の県とはいえ電車で約一時間の距離、夏樹由美の顔の広さがあったから実現したようだ。

松田は「行きたい行きたい!」と駄々をこねていたが、けが人が病院から出られるわけがない。肝試しの話を後でする、と約束したことで妥協したが、恐らく「肝試し」を楽しむ余裕などないだろう。


肝試しに行くとは思えない覚悟を決め、歩を進める。…

白百合中が見えてきた。現在の時間は午後五時。集合時間の一時間前である。だが白百合中には、まだ入らない。

正門から右に伸びてる道から、外のフェンス越しに校舎の形や校庭の形を把握する。

少しでも土地を知っていれば無知よりもはるかにマシなのは明白だ。このまま白百合中の周りを一周してしまおう。

と、その時…

「……あれ?狭山君?」

ひっ!!!

やましい事をしているわけではないのに心臓が波打つ。

振り返ると…夏樹由美がこちらに不思議そうな顔を向けていた。

「狭山君…早いわね。どうかしたの?」

どうする、本当の事を言うべきだろうか?

…いや、あまり関係がない夏樹由美には言う必要ないだろう。ここは…

「…ちょっと白百合中の構造が知りたくてね。ホラー系って、苦手なんだ。」

ふ〜ん。声にこそだしてないが、夏樹由美の表情は「そうなんだ、へー」とでも言いたそうな興味のない返事だった。この話題が続くことはないだろう。

再びフェンス越しに構造を確認するとするか…

「ねえ、狭山君。ちょっといいかしら?」

再び夏樹由美に呼び止められる。夏樹由美は、俺にまだ何かあるようだ。

「……なんだい?」

お願いだから邪魔しないでくれないか。という気持ちを押し殺しながらも返答する。

「肝試しまでもう少し時間あるし…歩きながら少しお話しでもしない?」

ちょうどいい、これなら構造が見れる。夏樹由美の話など、赤べこのように頷いてればいいだけだ。

「……いいよ、お話ししようか。」


「…でね?最近、無惨オールスターズってグループがいい曲だしてるのよ!特にこのアルバムの…」

かれこれ二十分。俺は夏樹由美の話を隣で聞きながら、学校構造の把握しようとしている。

夏樹由美の話というのは、たわいもない雑談であった。話題の幅が広く、聞いていて飽きさせない話選びには脱帽だ。しかし残念ながら、今の俺の目的は話の傍聴ではなく構造の把握だ。よっぽど重要な話でない限り、真面目に対応しようと思わないのだ。

「…やっぱ私は争い事のない平和な暮らしが最高だと思う………って狭山君、私の話きいてる?」

「アーモチロンキイテルヨ」

…なるほど、ここの学校は校舎と校庭が西と東に分断されているのか。西側には体育館らしき物もあるし、逃げるなら西側を走り回れば…「……もう!狭山君!」

突如、少し後ろにいる夏樹由美が怒りだした。

さすがに邪険にしすぎたか…

「ごめんごめん、もう終わったから。もう大丈夫だよ。」

「…本当なんでしょうね?」

「もちろん。もう把握できたから。」

「そう、なら良かったわ。」

…珍しい、会話が途切れた。さっきまでずっとマシンガントークを繰り広げていたのに。弾切れか?

「……ねえ、狭山君…」

突如、夏樹由美がしおらしくなる。具合でも悪いのか?

「……そんなに、私の事嫌い?話したくない?」

うん話したくない。関わらないでほしい。

…こう言えたらどれだけ楽なことか。しかし本音を言うわけにもいかない。ここは…

「そんな事ないよ。ぼくは夏樹さんの事、友達として好きさ。話したくないわけじゃなくて、話す話題がないんだ。」

…ふう。建前を繕うのも楽ではないものだ。

「そう、なの……」

しおらしい態度は治らない、か……

まあいいさ、建前は話したんだ。後は元気をだすよう励ませば…!

「……狭山君。嘘、ついてるわよね。」

………”え?”悪寒が身体中を駆け巡る。

「だって狭山君、私の目を見てないもの…」

冷や汗が吹き出した。動悸が急激に荒くなる。

「そ、そそそ…」

”そんなことない”いつもは考えなしに出てくる言葉でさえ発することができなかった。

「…またあとでね狭山君。私は先に学校に入ってるわ。」

この言葉を残し、夏樹由美は去っていった。

時刻は午後五時三十分。

俺は…一生忘れないだろう。

女の子を失望させたことを。

すれ違う時に「もういいわ。」と聞こえた事を。


実は今回の話、もともと入れるつもりなかったのです。しかしデータがぶっ飛び書き直すことになったのですが、そこでこの話を入れようと思いつきました。データぶっ飛びも、たまにはいい()

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