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天才少女の悩み

この作品は今より更に未熟な当時の執筆のため、見苦しい箇所や指摘箇所もいくつかあると思いますが、あえてそのまま手を加えずに載せています。ご了承下さい。

「ええ、そうです。その猫を一匹。なるべく大人しい子をお願いします」

「大丈夫ですよ。大人しいと言いますか、非常に賢い子猫がいますのでその子をお届けいたします。子猫でもよろしいですか?」

「子猫ですか・・・」

 子猫のほうが愛着も湧いていいかも知れないな。

「分かりました。その子猫をお願いします」

「ありがとうございます。ご希望の日時などはございますか?」

「今日の十時までにお願いします」

「はい・・・あのう、『今日の』十時。ですか?」

「そうです。今日の十時です。無理は承知ですが、その分支払ははずみます」

 無理は承知。というのも、依頼しようとしているのは、麓から車で二時間のところにあるペットショップだからだ。というのも、その猫を扱っているところでなおかつ配達が可能だったのがこのペットショップだけだったからだ。

「お願いできますか」

 さすがに難しい、というか無茶な注文なだけあって、電話の向こうではかなり悩んでる様子だったが、しばらくして、

「分かりました。出来る限り早くお届けいたします」

と返事が来た。

「ありがとうございます。では、よろしくお願いいたします」

 電話が終わると同時に、元気の良い金の声が聞こえてきた。

「はーい。いらっしゃいませ、一名ご来店でーす」

「おっと、もうお客様が。急ぎますか」

 早足で店内に入ると、そこには小さな女の子が真ん中のテーブル席に一人陣取っていた。

「お待たせしました」

「あ、ちょうど良かった。金、後は白にやってもらって仕込みのほうお願い」

「仕込みですか? それならもうやりましたけど」

「何人分?」

「五十人分は」

「じゃあ追加で百人分お願い出来る?」

「百人分? ちょっと多くないですか?」

「今日はいつもより良い天気だし、お客さん多くなりそうな気がするんだよ。余ったら食べていいから」

「そうですか、分かりました」

 金は少し戸惑いながらも仕込みをしに厨房へ向かった。

「それにしても、まさかあの方より早いお客様とは、驚きましたね」

「そうだね。いつもあの人が一番にお店に来るものだから、なんだかこういうのも新鮮かも」

 噂をすればとばかりに、その常連はやってきた。

「いらっしゃいませ。おはようございます森重さん」

「おお、おはよう葉一。いつものを頼めるか」

「はい。コーヒーとサンドイッチ、それと朝刊ですね」

 白髪をオールバックにしてサングラスをかけているこの森重という人は、この喫茶葉月が建っている山の管理人をしており、喫茶にはほぼ毎日顔を出してくれている常連だ。齢八十を超えているにも関わらずそこらの若者よりも若々しく筋肉もしっかりしている。

「おや、今日は珍しく先客がおったか」

 カウンターに座ってから後ろの少女に気付いた。

「ええ、なんと開店と同時に来てくれました」

 少女はさっきから携帯電話をかなり気にしているようだった。

「ん? あの校章、どこかで見たことがある」

「校章ですか?」

「あの子の肩に刺繍してあろうが」

 言われてよく見ると、なるほど確かに。盾のような形の枠の中に一つ大きな星があり、その星から翼がはえているような・・・。いや、翼が星を包んでいるのか。

「この辺りの学校ですかね?」

「いや、あれは確かT都にある・・・。なんと言ったかの。全国的にも有名校だったはずじゃが・・・」

「聖星女学院の校章ですね」

「白知ってるの?」

「少し前に学院始まって以来の天才少女が現れたと話題になりましたから」

「おうそうじゃ、確か名前は―――」

「吉本早百合です」

 いつの間にかカウンターのところまで来て、女の子は言った。

「学院創設以来の天才として、日本全国にその名が知れ渡りました」

「なるほど、話題になるはずだ」

「そして、その天才少女と言われる吉本早百合というのが私です」

「・・・こりゃ驚いた。まさかお嬢ちゃんがあの吉本早百合とは・・・」

「夏休みで避暑に来たのかな?」

「ええ、まあ・・・。あの」

「どうしたの?」

「しばらく、ここに通ってもいいでしょうか」

「それは構わないけど、そういえばご両親は?」

 両親のことを聞かれ、ぐっと黙るが、決意したように話し出した。

「実は、両親には内緒で来ました。その、依頼をしに」

「依頼っていうと?」

「始末屋の葉月という方に依頼があって来ました」

「はあ、やっと終わったー」

 若干シリアスな雰囲気の中を見事壊して金が戻ってきた。

「あれ? 皆さんどうしたんですか?」

「えーと、じゃあとりあえず話を聞こうかな。金、依頼だよ。準備して」

「依頼ですか!? あわわ、ちょっと待ってくださいね!」

 金が慌てて準備をしに奥へ行くと同時に、ペットショップの配達がやってきた。

「ちわー。ご注文のお届けでーす」

「ご苦労様です」

「あ、今朝話してた猫? もう届いたんだ」

 配達員の持っているゲージには、かわいらしい子猫が入っていた。

「代金のほうは小切手で申し訳ないのですが」

「あ、はい。・・・こんなに!?」

「急がせてしまったお詫びです」

「いやいや、それにしたって・・・」

「どうぞ、お納めください」

「はあ、すみませんね。それではまたのご利用お待ちしてます」

 よほど金額が大きかったのか、戸惑いながらも受け取っていった。

「子猫・・・?」

「ほぉ、猫を飼うことにしたのか」

「はい。金に言われたら私も気に入っちゃって。早百合ちゃん、猫好き?」

「え? あ、はい」

「今はまだ環境に慣れないから借りてきた猫みたいになってるけど、三日もすれば元気になると思うんだ。そしたら遊んであげてね」

「はい」

 早百合は子猫をじっと幸せそうに見つめて

いた。

「さてと、わしはそろそろ帰ろうかの」

「もうお帰りですか?」

「これから仕事じゃろ?」

「すみません、ありがとうございます」

 森重は、明日また来ると言って帰った。

「葉一さま、準備出来ましたよ! ってあああ! 猫がいるー!」

 仕事道具を持ってくると、今度は猫に目を奪われ、抱きつこうとするが、ひらりとかわされた。

「あれ!? 猫さんが抱擁をかわした!?」

「そんなわけないでしょう」

 もちろん猫の入ったゲージを持った白がかわしただけだ。

「来たばかりの子猫にそんなことしたら怖がるだけです」

「えー、抱っこしたりスリスリしたりしたいのにぃ~」

「それはまた今度ね、今は仕事だよ」

「は~い」

 大丈夫・・・なのかな?

一連のやり取りを見ていた早百合は一抹の不安を覚えた。

「さて、これからのやりとりは一応録音と録画をさせてもらうね」

「分かりました」

 葉一が目配せすると、金はビデオカメラとボイスレコーダーのスイッチを入れた。

「まず、私たちを知ったきっかけは?」

「お父さんが知人の方と話していたのを聞いて」

「依頼内容は?」

「私の頭脳を歳相応にしてもらいたいんです」

「というと?」

「私はまだ小学五年生ですが、感覚も視点も大人と同じ。頭脳にいたっては大学教授と同等と言われています。でも私は、こんな頭脳は要らないから同い年と普通の女の子として触れ合いたい、遊びたいんです。なのに学校以外の場所でも例え家の中だろうと私の頭脳を目的に多くの政治家や研究者たちが毎日訪問して難題を解かせようとするんです」

「どうしてそんなに難題を持ちかけるの?」

「私が常人より記憶力・理解力に優れているから、他の人に出せないような答えを出すから。そうした難題を解けば解くほど更に知能が増していくから・・・。でも、私は普通の女の子として楽しく過ごしたいだけなんです」

「葉一さま・・・」

「分かってる。でもね、私情を挟んではいけないんだ」

「・・・はい」

「依頼内容と動機は分かりました。望むのであれば、相応の報酬と引き換えに依頼を受けます」

「本当ですか!?」

「始末の方法としては、早百合ちゃんの知能を退化させます」

「知能を退化させる・・・?」

「そうです。何重もの暗示や催眠を用いて天才的頭脳を封印。その上で十一歳ぐらいの子供まで知能を低くします」

「もし、万が一封印が解けてしまったら?」

「その時はまたお越しください。可能性は無いとは言い切れませんので、その場合は無償でまた封印します」

「そうですか。それはどのぐらい時間が必要ですか?」

「本当なら封印してから一ヶ月かけてゆっくり低下させたいのですが、時間のほうは」

「時間ならあります。両親には用事だと言ってあるので心配ないと思います」

「分かりました。ではこの書類にサインを」

 提示された書類にサインをすると、安堵の息が漏れた。

「正直、ここが駄目だったら自殺する覚悟で来たので、本当に安心しました」

「自殺は駄目ですよ!」

 金が慌てて言うが、早百合は笑顔だった。

「大丈夫です。もうそんなこと考えませんから」

「じゃあ早速今日から始めようと思います。ただ、喫茶店を一ヶ月も閉めるわけにはいかないので、営業中のお店は白と金にまかせるよ」

「了解しましたぁ!」

「了解です」

「あの、素人が意見するのもなんですが・・・」

「どうしました?」

「葉月さん一人で大丈夫なんでしょうか?」

「そのことなら心配要りませんよ」

「それならいいんですが・・・」

「伊達に始末屋葉月家の当主をやってませんから。ああ見えて知識も経験も豊富なんですよ」

 ああ見えて。というのはどうかと思うが、一見するとただの高校生ぐらい。綺麗なオッドアイが目を引くが、おっとりしたかわいい女の子。といったほうがしっくりくるぐらいだ。だが、実力は申し分ない。

「だから、安心して任せてください」

「そういうことなら、分かりました。よろしくお願いします」

「さて、じゃあそろそろお客さんも来るだろうからお店再開しようか。白」

「分かりました」

「これから私は早百合ちゃんの依頼をやるから奥に居るね。何かあったら呼んで」

「わっかりました~」

ご意見、ご感想などありましたら、よろしくお願いします。

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