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女子高生とコーヒー、それと怪  作者: 霜見肇


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9/9

10

 あのあと、禁足地には複数の救急車と警察まで来て、結果的にかなりの大ごとになった。私たちはというと、メディア関係の人たちが話を聞きつけてやってくる前に、その場を立ち去っていた。それも全て、義隆さんが根回しをしてくれた結果らしい。


 その後、事件のことが大々的に報道され、私に動画を送ってきた張本人は、かなり反省をしたみたいだった。憔悴して、数日学校を休むくらい。当の私はと言うと、その噂を聞くまで、そのことにまったく気付かないくらいには、その子に興味がなかった。あんな大変な思いをさせられた割には。


 彼女は登校するなり私を呼び出すと、謝罪という名の言い訳を長々とした。曰く、彼女の好きなクラスメイトが、私のことを気にしているという、なんとも迷惑な噂を耳にしたようで。そのとき流行っていた「不幸になる動画」を私宛に送ったことが、全ての元凶らしかった。


 彼女には何かあったかと聞かれたけれど、私は何もなかったよと嘘をついた。もう正直、彼女のことなんてまったく気になっていなかった。


 あれから数日が経ち、私は放課後、またあのお店を訪ねようとしていた。重い扉を押すと、低い音でベルが鳴った。


「……あ、茉莉花ちゃん。いらっしゃい」


 柔和な表情で、義隆さんがひらひらと手を振る。


「どうも……」


 その話を義隆さんにすると、「まあ思春期だしねぇ」とのんびり彼は言った。


 義隆さんは慣れた手つきで私が注文したコーヒーを用意すると、どうぞとカップを出してくれる。


「……あれ? でも茉莉花ちゃん、コーヒー飲めないんじゃなかったっけ?」


「そうなんですけど……あの日は何故か美味しく感じたんですよね。このお店のコーヒーが特別なのかな……」


 そう言って一口啜ってみると……苦い。どろりとして、舌にまとわりつく感じもする。頑張って、口に入れた分だけを私はなんとか飲み込む。そんな私の表情を見て、義隆さんはふふと妖しく笑った。


「……すごいね、正解だよ。うちのコーヒーは特別なんだ。あの日みたいに怪異に()()()()人には、美味しく感じるようにできててね」


 えぇ……なんですかそれは。一体どういう理屈で……? 


「……まあでも、逆にそれで良かったです。そのほうが、この先楽しめそうですし」


 私は鞄から一枚紙を取り出して、義隆さんに差し出す。


「……履歴書?」


「バイト、募集してるんですよね?」


 店内の張り紙を指さした。


「ありがたいけど……でも、どうしてうちなの?」


「……コーヒー、飲めるようになりたくて。大人っぽいかなーって」


「あの感じだと、当分難しそうだけどねぇ」と言う義隆さんを見て、私はとても意地悪だと感じたのだった。

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